文楽とか浄瑠璃とか

文楽のことなど徒然に

カテゴリ: 文楽

11月15日は文楽劇場へ
令和3年 錦秋文楽公演 第一部 蘆屋道満大内鑑 
保名物狂/葛の葉子別れ/蘭菊の乱れ へ伺いました。

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蘆屋道満大内鑑は「金烏玉兎集(きんうぎょくとしゅう)」
伝授をめぐる権謀術数に巻き込まれていく2人の伝承候補者
蘆屋道満と安倍保名がたどる数奇な運命に、道満親子の悲劇、
信田妻伝説等を絡め、道満と安倍晴明が、陰陽師として
語り継がれる存在となった経緯を描き出す全5段の時代物です。

現在では、もっぱら清明の母である白狐と保名父子の別れを描く
「葛の葉子別れ」が上演されますが、今回は保名と2人の葛の葉が
出会う場面「保名物狂い」並びに、家族と別れ森へと帰る
葛の葉の道行き「蘭菊の乱れ」が12年ぶりに上演されました。

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芝居を楽しむガイドとしては、本公演の公演プログラムが、
とても良い手引きとなっています。
特に和生さんのインタビューは、葛の葉への理解を深められる
素晴らしい内容です。

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お席2列17番にて。

【手摺】

◆保名物狂い

(口)
碩くん、高いところ、お声がちょっと裏返りましょうか。
燕二郎くん、マイペースでGJ。

(奥)
織さん、美しゅうございました。
この段は景事であると思い知らされた。
物狂う保名の哀れな美しさ
主を思う与勘平の悲しみと男気。
保名が正気に戻った瞬間の「ヤイ与勘平」はとても良かった。

ツレの小住ん。大変やったと思います。
せやけど、よう気張ってはった。

藤蔵さん、清公さんは少しメロウな
恍惚と現実が交差する物狂いモード。
素敵でした。

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◆葛の葉子別れ

(中)
亘くん、友之助くん、よかったです。
我が子の殺生に対する気がかりが表現出来ていた。

(奥)
錣さん、宗助さん、よろしゅうございました。

「狐につままれる」という言葉そのままに
4人が呆気にとられる中、いよいよ正体を表す白狐。
葛の葉の狐言葉が不思議な世界へ引きずり込む。

葛の葉が去ったあと、悲しみに暮れるところに
敵の襲撃で物語は一気に動き出し、勢いつけて信田の森へと。

バラエティに富んだ登場人物、心模様の変化
ダイナミックな場面転換の連続
この難しい段を見事に語り、弾いてくれはりました。
素晴らしかった。

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◆蘭菊の乱れ

清治さん率いるお三味線VS太夫、
総勢10人が奏でるお浄瑠璃のなんと華やかで美しいこと。
清治さんのキラキラ光る音色が聴けて嬉しかったです。

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【手摺】

和生さん、圧倒される葛の葉の存在感。
蘭菊の乱れは、研ぎ澄まされた遣いが見せる
その瞬間、瞬間の姿が残影となり
どんどん葛の葉の人形が大きくなっていくようでした。
左と足も綺麗に流れていました。

簑二郎さん、保名。
物狂いの最中、葛の葉姫を見つめる
「あっち側に行ってしもうてる」視線、
正気に戻ってからの目つき、顔、そして佇まい。
同じ人形やのに、こんなに変わるんかと
ドキドキしながら見ておりました。

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玉志さん、奴与勘平。
人形の大きな遣い、バシバシ決める型。
保名を受け止め涙する姿、素敵でした。

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勘壽さん、文司さん、紋臣さんの信田庄司ファミリー
勘次郎くんの安倍童子、悪役、大勢の皆さんも
とてもよろしゅうございました。
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浄瑠璃がピシっとつながると芝居がぐっと立ちますね。
人形も盤石の布陣で、床と手摺が挑み合った
緊張感のある、素晴らしい文楽やったと思います。

良い芝居を楽しませていただきました。
有難うございました。


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気がつけば師走。
12月4日からは東京で鑑賞教室が始まり、
年が明ければ初春公演です。

暮れも新年も、ずっといつも、
無事に初日を迎えられますように。

技芸員の皆様、関係者の皆様、そして観客の皆様の
ご健勝を祈念しております。
必ずお元気でいて下さいますように。




10月23日、27日は文楽特別講座へ伺いました。

この講座は、文楽公演に向け、観客の皆様に、
より深く演目を理解してもらうことを目的として企画されたものです。

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第一弾となった今回は、
錦秋文楽公演第三部「ひらかな盛衰記 神崎揚屋の段」を取り上げ
第一回目(10/23)は、千歳さん、富助さんによる浄瑠璃解説を軸に
第二回目(10/27)は、勘十郎さんによる人形解説を軸にお話を頂きました。
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講座の内容は、普段、書籍等で読んでいる芸談、つまり
作品の聴きどころ、見どころを知る最高の手引きを
目の前で技芸員さんに実演を交えて語っていただく
そのようなものだったと感じています。

少し難しい専門用語も出てきますが
今まで本を読むだけでは、今ひとつ、ようわからんかった部分を
技芸員さんが「藝」を披露し、瞬時に感覚で分からせてくれたという
醍醐味がありました。

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わたくしにとっては、2回とも、とても興味深く、面白く
作品や技芸への理解を深められた、良い講座だったと思います。

講座を通して得られた情報を、なんとかして自分の中で膨らませ
これから鑑賞する文楽の世界を広げ、深めていける
自分独自の手引きへと結びつけたいものやなとしみじみ。
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この講座は、技芸員さんや劇場の方に、ご都合のつく範囲で
可能なら、ぜひシリーズ化していただければ嬉しく存じます。

千歳さん、富助さん、勘十郎さん、文楽劇場の皆様
この度はありがとうございました。

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早いもので、今週末10月30日から綿秋文楽公演が始まります。
どうか無事に初日を迎え、千穐楽まで良い文楽が続きますように。

技芸員の皆様、関係者の皆様、そして観客の皆様の
ご健勝を祈念しております。
必ずお元気でいて下さいますように。




8月3日は文楽劇場へ
夏休み文楽特別公演第一部 親子劇場 千穐楽 
うつぼ猿 文楽ってなあに? 舌切雀へ伺いました。

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親子劇場は、小さなお友だちと、その保護者の方々を対象とした
チャーミングな公演です。

どの演目も、ちびっ子たちが楽しめる工夫がされていて
いつもの文楽とは違った魅力があり、
大きなお友だちも、大勢お運びになっています。

今回は「うつぼ猿」「解説」そして「舌切雀」の3本立てでした。

お席2列16番にて

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◆うつぼ猿

うつぼ猿は狂言「靭猿」から移植された演目です。
NHK「にほんごであそぼ」でも紹介されていたので
ご存知のお友だちも多いのではないでしょうか。

◆靭猿/にほんごであそぼ

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床も手摺も、皆さんよろしゅうございましたね。
短い演目ですが、狂言らしい可笑しさと、
幸せを祈る厳かさのある、良い文楽でございました。

藤さん、芳穂さんが並ぶ床の贅沢なこと。
聖くん、薫くん、デビューおめでとう。
お三味線の皆さんも良かったです。

文司さん猿曳、遣いが美しいのはもちろん、
お顔もきゅっと引き締まって、
えらいイケメンにならはった気がします。

文哉さん大名、品があって大きかった。
薙刀を振る弁慶や、弓を引く大名など
「道具」を持つお役は難しいと思うのですが
鑑賞教室も今回も、きれいに遣うてはりました。

玉路くん、お猿さんかいらしかったです。
扇もちゃんと足で挟めてGJ。

紋吉さん、太郎冠者よかったです。

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◆解説 文楽ってなあに?

今回は人形遣いの解説でした。
勘次郎くん、初めてとは思えん端正な解説。
よろしゅうございました。

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◆舌切雀

小さなお友だちから大きなお友だちまで
みんなが知っている「したきりすずめ」のお話です。
文楽では、お竹婆が改心するというハッピーエンディングになっています。

芝居は、宙乗りから、ハイテクを使った妖怪たち、オオタニサーンまで、
ワクワクドキドキの工夫を随所に凝らしたダイナミックなエンタテイメント仕様で、
グランマなわたくしも、童心に帰って楽しませていただきました。

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床は、若手のイケメンがずらっと並び、溌剌としていましたね。

太夫陣、
小住んGJ、碩くんは声が若くてかいらしい。
亘くんは少し声が枯れてはった。
エアで飴ちゃんあげるし気張ってな。

お三味線方、
チーム清志郎の皆さんは、音色もルックスもカッコよかったです。

手摺の皆さん、楽しゅうございました。

勘市さん、優しいお爺さん。
玉助さん、エネルギッシュなお竹婆。
妖怪たちの立ち回りは大きくて迫力満点。
雀の皆さん、かいらしかった。

エンディングのフライング・スパローは華やかなことでした。

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8月21日には素浄瑠璃の会が開催されます。
そして9月には東京公演、10月末からは綿秋公演が始まります。

どうか無事に初日を迎えられますように。

技芸員の皆様、関係者の皆様、そして観客の皆様の
ご健勝を祈念しております。
必ずお元気でいて下さいますように。




7月30日は文楽劇場へ
夏休み文楽特別公演第三部 夏祭浪花鑑 
三段目(鳥居前)/六段目(三婦内)/七段目(長町裏(泥場))へ伺いました。

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夏祭浪花鑑は、泉州堺の魚売りが起こした殺人事件を下敷きに
歌舞伎で上演された「宿無団七」を先行作品として成立した
九段続きの世話物です。

現在でも夏狂言として人気が高く、三年に一度くらいの頻度で、
もっぱら鳥居前、三婦内、長町裏が上演されています。

この三段の全体像や人物相関に関しては、図にまとめてみましたので
よろしければご覧下さいませ。
⇒夏祭浪花鑑 登場人物相関図、作品概要、床本リンクなど

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PDFはこちらからご覧頂けます。

芝居を楽しむガイドとしては、公式プログラムはもとより
技芸員さんの芸談や、いろんな方が書かれた解説がございますので
合うものをご覧になっていただくのが良いかと思います。

歌舞伎でも人気の演目ですから、両方を観劇して
違いを楽しむのもよろしいかと。

物語の舞台は国立文楽劇場の界隈ですので
感染症の問題が終息した暁には、熱中症に気をつけながら
高津宮や日本橋界隈を散策してからレイトショーというのも
楽しいんちゃうかな。

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お席2列14番にて

この日の文楽は、緊張感を持って、ぐっと立ち上がった
とても大きなエンタテイメントでございました。

床は最初から最後までピシっと一本に繋がり
手摺は立役も女形も強い布陣で義太夫を受けて立ち
三業が技をぶつけ合ってダイナミックに浪花の侠客の世界を
描き出していた。

どの段もよろしゅうございましたが、
特に長町裏は圧巻でございましたね。

お見事でございました。

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祭囃子、だいがくの灯り、そしてお神輿。

わたくしたちの暮らしの中に、普通に存在した「祭り」が
できなくなって1年半が経ちます。

そんな中で、この芝居を上演してくれて嬉しかった。

祭りは文楽劇場にありました。
ありがとうございました。

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8月21日には素浄瑠璃の会が開催されます。
そして9月には東京公演、10月末からは綿秋公演が始まります。

どうか無事に初日を迎えられますように。

技芸員の皆様、関係者の皆様、そして観客の皆様の
ご健勝を祈念しております。
必ずお元気でいて下さいますように。





7月27日は文楽劇場へ
夏休み文楽特別公演第二部 生写朝顔話 
明石浦船別れ(二段目)/四段目へ伺いました。
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生写朝顔話は、周防の大名、大内家のお家騒動、
安芸の大名、岸戸家の悪政による一揆などの政治的な事件を背景に、
両家にゆかりのある2人の男女のすれ違いの恋を
ロードムービー的に描き出した時代物です。

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芝居を楽しむためのガイドとしては、
物語の全体像を、写真や地図も入れて、わかりやすく解説した
本公演の公演プログラムが、役立つと思います。

収録されている千歳さんのインタビューも、
宿屋の聴きどころ見どころを気づかせてくれる
興味深い内容です。
 
また、第23回文楽素浄瑠璃の会、並びに、第139回文楽公演の
公演プログラム及び床本も、良い手引となっています。

さらに理解を深めたい方は、こちらの論文をご一読下さいませ。

◆近世後期における淡路人形座と大坂浄瑠璃界 : 『生写朝顔話』を例として
著者:大阪市立大学 久堀裕朗先生

物語の成立過程や、影響を受けたと思われる先行作品との対比、
当時の淡路人形座と大坂浄瑠璃界の関係などがよくわかりますし、
付録として掲載されている『増補生写朝陣話』梗概は、
物語の全体像を理解する助けとなりましょう。

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お席2列14番にて

【床】

◆明石浦船別れ

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◆薬売り

希さん、勝平さん、楽しゅうございましたね。

希さん少しスロースタートに感じましたが、
「密です」との相乗効果で客席を盛り上げていた。
勝平さんのお三味線はいつも頼もしい。

◆浜松小屋

ごめんなさい。寝てしもた(ノ∀`)

清介さんのお三味線に「おお!」と、なった後
なぜか心地よくうつらうつらと。
後半でやっと目が覚めたことでした。

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◆嶋田宿笑い薬

【中】
南都さん、清馗さん、たのしゅうございました。

南都さん、ハマってた。

女中と手代のちょけたシモネタから
岩代と祐仙の、悪巧みの相談にも関わらず、なぜか滑稽に感じる
喜劇的な雰囲気を楽しませていただきました。

【奥】

咲さま、燕三さん、シュールな一段、とてもよろしゅうございました。

以前この場面を聴いた時は(お浄瑠璃は別の方)、
自分が笑い薬を盛られたように、お腹がよじれるかと思うほど
笑い転げたと記憶しています。

それはとても楽しい経験でしたが、現在の状況では(感染予防の観点から)
たとえ観客がマスクをしていても、笑わせ続けるのは難しい。

どないするんかなと思うておりましたが、
観客の視点を阿曾次郎や岩代、徳右衛門側につけて
「意味不明に笑い続ける男を見る」という
奇妙な感覚へと引きずり込みはった。

好みが分かれる演出かもしれませんが
わたくしには「どストライク」で、とても面白かったです。

お見事でございました。

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◆宿屋

千歳さん、富助さん、素敵でした。
燕二郎くんの琴も、よろしゅうございましたね。

プログラムに収録されている千歳さんのインタビューを読みながら
改めて、あの冒頭の阿曾次郎はよかったなとしみじみ。

ところで、今回のリーフレットの写真や、
様々な浮世絵に描かれた、このシーンの朝顔の表情は
どことなく嬉しそうというか、楽しそうというか
哀れな立場にも関わらず、幸せそうに感じられます。

朝顔の胸に満ちた阿曾二郎への思いがそうさせてるんかな、
と、思うたりもするんですが、復習で気づいたことゆえ
答え合わせは叶わず。

もし、そうであれば、この溢れんほどの想いが
雨で嵩の増した大井川と重なり、水は溢れず持ちこたえても
朝顔の想いの堰は切れるという、次の場面に繋がって行くのでしょうね。

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◆大井川

大好きな段です。
錦糸さん、靖さん、宿屋からお浄瑠璃がちゃんと繋がっていて
とてもよかった。

朝顔の阿曾次郎への想いが切羽詰まって溢れる様、
徳右衛門のクドキ、イケメン関助、みんな素敵でした。


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【手摺】

まず最初に、勘十郎さん、この度の人間国宝認定おめでとうございます。

今回は勘十郎さん朝顔、和生さん阿曾次郎と、
国宝2人が主役を遣うという、贅沢な配役でございました。

この演目、人形遣いの皆さん、とても素敵でした。
どのお役も、品があって、美しゅうて、安心して見ていられた。

ひとつ、わたくしの後悔は、浜松小屋で寝てしもて
浅香すっとぼけの身拵え、深雪のクドキ、名乗りあった2人の再会
などなど、大好きなシーンを見逃してしもたことです。
ただ、吉兵衛登場の前あたりで目が覚めて、その後の立ち回りが
見られたのは幸いでした。

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簑二郎さん祐仙は、とてもよろしゅうございましたね。

この男は、悪いことを企んでる、してるくせに
することなすこと滑稽で、何故か憎めん、チャーミングな登場人物です。

一生懸命悪さをするのに、首尾よくコトが進まんだけでなく
惚れ薬から偽阿曾二郎、笑い薬に至るまで、いつも人に騙され、笑われ、
最後は自分も無理やり笑わされてしまうという、不憫な男でもあります。

お金があっても、どんくさく、ままならん人生を送る
哀れさと滑稽さが一体となった、その名のついた首を持つ、
まさしく「祐仙」の魅力というんかな、
それを、たっぷり楽しませていただきました。

左と足はどなたがお遣いでしたか。
綺麗に流れていました。

玉輝さん岩代は、悪役やのにカッコよかったです。

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勘壽さん徳右衛門、美しゅうございました。
薬売りから大井川まで、大きな動き無しに、
静かで重厚な存在感を醸し出していた。
この遣いがあったからこそ、クライマックスを
違和感無く受け止められたのやと思います。
素敵でした。

簑紫郎くん吉兵衛、玉勢さん奴関助、
2人とも、それぞれ異なる、色気のあるイケメンで良かったです。

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文楽の若手技芸員が中心となって企画した
初めてのクラウドファンディングプロジェクト
「文楽夢想」も無事に成功し、何よりでした。

8月21日には素浄瑠璃の会が開催されます。
そして9月には東京公演、10月末からは綿秋公演が始まります。

どうか無事に初日を迎えられますように。

技芸員の皆様、関係者の皆様、そして観客の皆様の
ご健勝を祈念しております。
必ずお元気でいて下さいますように。




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