1月21日は文楽劇場へ
初春文楽公演第二部 碁太平記白石噺 六・七段目
浅草雷門・新吉原揚屋の段へ伺いました。

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国立国会図書館デジタルコレクション
御存白石噺 明治13年1月上演 新冨座
書籍ID:023806247

碁太平記白石噺は慶安太平記で評判となった
宮城野、信夫姉妹による敵討ちの話しを脚色した
全11段の物語です。

現在では、全段上演されることは無く
もっぱら六段目、七段目が上演されています。

この場面に関しては、解説プログラムはもとより
リーフレットや劇場バナーなど、どれを見ても
宮城野、おのぶ姉妹に焦点が当たっているように感じます。

物語は2人を中心に進みますので
当たり前といえば当たり前のことなのですが

この浄瑠璃の成立、
「誰が、いつ、どこで、何を、誰のために、どんな世界を描いたか」を
紐解きますと、ほんまの主人公は大黒屋惣六ちゃうんかと
わたくしには思えたりするのです。

綺羅びやかに見える生活、姿とは裏腹に、
苦労に苦労を重ね、今もまだ辛い人生を送る傾城と、
両親を無くし、悲しく悔しい思いをしながらも
ただ姉と共に仇を討ちたい一心で
奥州から一人江戸に出てきた田舎娘、

そんな姉妹の後ろ盾となり敵討ちを成し遂げさせる、
「江戸の粋人ここに極まれり」
「我らが江戸っ子ヒーロー物語」
のように感じられるのですね。

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国立国会図書館デジタルコレクション
御存白石噺 明治13年1月上演 新冨座
書籍ID:023806247

物語の作者3人は江戸の町人で
大黒屋惣六のモデルは十八大通の1人、大黒屋庄六です。
作者と庄六、互いに面識があったなら
姉妹を助け、悪人を成敗するのに一肌脱いだ
花も実もある轡の惣六、そんなふうにしてくれや、
よっしゃ、ほな描いたろやないけ、
みたいなモンはあったんやないかと。

この辺に関しては、摂南大学の牧田勲先生が
『論文「奥州白石女敵討」とその社会的受容 庶民の中の敵討』
書かれているので、ご興味のある方はぜひご一読下さいませ。

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そのような視点で床本を読み返しますと
なるほど、大黒屋惣六は粋でイケメンに描かれてると
あらためて実感します。

特にエエなあと思うのはこの辺でしょうか。

「泣かぬ涙のしのぶ摺り娘引き連れ」

ここは惣六とおのぶ両方を描いてるのかもしれませんが
惣六の姉妹に寄り添う気持ちと読めば素敵なところです。

しのぶ摺り=忍摺・信夫摺

忍摺は奥州(姉妹の故郷)の染め物の名前です。
その染めの具合とあわせて「乱れる」の意味も持ちます。

「春日野の若紫のすり衣しのぶの乱れ限り知られず」(伊勢物語)
これは美しい姉妹に心を乱す男の歌。
惣六は恋をしてるわけやないけど、2人を心配することにつながる。

言葉そのまま「しのぶ=信夫=おのぶ」で「(心を)忍ぶ」もあり。

「忍草」は秋の季語です。これで季節も推測出来ます。

このように、いくつもの意味を重ねて、
シュッと一行で、おのぶを連れ帰る。

粋やなあと(*´ω`*)

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◆お席2列16番にて

【床】

◆浅草雷門

南都さん團吾さん 
全集中の呼吸から近鉄百貨店の紙袋まで
豆蔵の弁舌・手品よろしく入れ事・小道具でつかみはOK。

そして咲様、燕三さん
粋な惣六がおのぶを助けて安心したあとは
観九郎と、どじょうのやり取りに抱腹絶倒
お正月気分がぐっと盛り上がる
超一級のチャリ場でございました。

◆新吉原揚屋

呂さん、清介さん、素敵でした。

惣六はカッコよく、
宮城野は気品があって、けれど、おのぶに接する時は、優しい姉さんで
おのぶは健気でかいらしく、
ちょけた新造2人もよかった。

狂言まわしでもある妹おのぶの語りは
耳慣れん言葉で、観客にこれまでの経緯を
理解させなあかんのですが

その辺がようわかると同時に、
方言の持つ独特の音階、リズムがとても心地よく、
なんてチャーミングなんやろ、なんて魅力的なんやろと、
しみじみと聴き入っておりました。

清介さんのお三味線はいつもながら素敵で(人´∀`).☆.。.:*・゚
素晴らしゅうございました。


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【手摺】

◆和生さん宮城野

絶品でございました。
気品があって、美しくて、これぞまさしく傾城。

これまでの辛苦を語るシーンを始め、
宮城野の見せ場は沢山あったんですが
何故か、わたくし、そのような見せ場ではなく、
おのぶの涙を拭いてやる姿に感動して
胸に熱いものが込み上げてしもたことでした。

◆玉也さん大黒屋惣六

カッコよかったです。
2年前の天河屋義平を思い出しました。
あの時も、首は検非違使やった。
義商とは少し違いますが
江戸っ子らしい人情味のある、
まさしく「花も実もある」イケメンの旦那さんで
とても素敵でした。


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◆簑紫郎くん おのぶ

よろしゅうございました。
かいらしい、素直な、けれど、心の強いおのぶを遣えていた。
碁太平記白石噺の上演は5年ぶりで
今回、簑紫郎君は代役、そして初役でしたが
日頃のご精進がようわかる遣いにございました。

◆玉勢さん観九郎、勘市さん豆蔵どじょう

玉勢さんはここ最近、随分人形が大きくなったと思います。
勘市さんも良く遣われていた。
よう笑わしてもらいました。

他の皆様も良かったです。

文昇さん、くれぐれもお体お大事に。
しっかりご養生なさって、かならずお元気になられますように。

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※妹おのぶは簑紫郎君

すでに立春も過ぎ、先週末から東京の国立劇場では
2月文楽公演が始まっています。
どうか無事、何事もなく、千穐楽が迎えられますように。

技芸員の皆様、関係者の皆様、そして観客の皆様の
ご健勝を祈念しております。
必ずお元気でいて下さいますように。