1月12日は文楽劇場へ
初春文楽公演第三部 妹背山婦女庭訓 四段目 
道行き~金殿の段へ伺いました。

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妹背山婦女庭訓は大化の改新を主軸に
三輪伝説を始めとした様々な大和地方の伝承を絡め
描き出される状況、登場人物の立場、舞台芸術など
あらゆるパーツをシンメトリーに配置して組み上げた
全5段の壮大な王代物の傑作です。

物語の全体像やざっくりしたあらすじに関しては
2019年国立劇場における通し上演の特設サイトで紹介されています。

前半はゴージャスで品格あふれる和製ロミオとジュリエット物語。
後半は蘇我入鹿打倒を目論む男と、彼に翻弄される若い娘の悲恋が、
苧環伝承に重ねて描き出されます。
今回は後半のクライマックス、道行きから金殿までの上演です。

この段、お三輪に関しては、簑助師匠と山川静夫さんが「文楽の女」で、
求馬に関しては初代玉男師匠が「文楽藝話」の中で言及されています。
聴きどころ見どころを知る良い手引となっていますので、
ご興味のある方はぜひご一読下さいませ。

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上田市立図書館・花月文庫/音楽 272
十三鐘絹懸柳/妹背山婦女庭訓
国文学研究資料館 近代書誌・近代画像データベース 
文献コード KGTU-00528

国立文楽劇場では、平成28年4月の通し上演以来の本公演での上演、
わたくしにとっては、平成25年7月以来の文楽での金殿です。

7年以上の時間が経っているにも関わらず、
わたくしが、この段を、とても身近に感じるのは
一昨年に、駒之助師匠の素浄瑠璃と、淡路の人形浄瑠璃で聴いて観て、
また、自分でも相関図を描いて遊んでいたりしたからなのでしょう。

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上田市立図書館・花月文庫/音楽 272
十三鐘絹懸柳/妹背山婦女庭訓
国文学研究資料館 近代書誌・近代画像データベース 
文献コード KGTU-00528

◆お席2列16番にて

【床】

◆道行恋苧環

男1人を取り合う若い娘2人の恋心、嫉妬、キャットファイトに
女心を手玉に取るイケメンの思惑が絡むロックな状況を、
美しい旋律と詞章で描き出す道行きです。

紅白の苧環、恋に生きる女と使命に生きる男
在所の娘と貴族の姫君、淡海と求馬のコントラスト
糸が絡まるように人形が舞台で動く様も美しい。

この名曲を奏でるのは
藤蔵さん率いる6人のお三味線方 VS 織さん率いる5人の太夫陣。

皆さん、よろしゅうございました。

出だしはチーム藤蔵に押され気味かと思えた太夫陣も
じわじわと盛り返し、聴き応えがありました。

特に勝平さんVS芳穂さんの橘姫。
難しい節がついていると思うのですが
芳穂さんの高音が伸びて、勝平さんのお三味線も絶妙で
とても素敵でした。

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国立国会図書館デジタルコレクション
妹背山婦女庭訓 : 解説. 竹に雀の段
書籍ID:000000646898

◆鱶七上使

清志郎さん、最初の一撥から、その音色に引き込まれました。
籐さん、鱶七、入鹿、大迫力。
訝しがる入鹿、すっとぼけ鱶七。
官女たちとのやり取りも面白い。

わたくし、鱶七という大胆でチャーミングな人物が大好きで、
この段、とても楽しみにしていたのですが
期待どおりの、どっしりした、太く豪快なお浄瑠璃で、
嬉しゅうございました。

◆姫戻り

求馬と橘姫、それぞれの思惑が交差する難しい段です。
求馬はここで淡海の本性を見せる。

浮かび上がるのは、
ミッションに生きる男と恋を選ぶ女のコントラスト。

希さん、清丈さん、GJ。

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大阪市立図書館デジタルアーカイブ
書誌ID 0012487567

◆金殿

錣さん、宗助さん とてもよろしゅうございました。

この段、主役であるお三輪の感情、状況の変化は
大雑把な箇条書きにしても、これくらいはあります。

・求馬を追いかけ、はやる気持ち
・豆腐の御用相手にあたふた
・官女相手に口からでまかせ
・求馬に会いたい一心でいじめに耐え
・叶わんと知り口惜しさ頂点
・鱶七に刺されてマッドマックス疑着の相
・求馬の役に立つと知って幸せ
・最後にひと目顔が見たいと恋しさいっぱい
・思いの魂、糸切れる。

この中で、更に細かく、嫉妬したり、がっくりしたり
コスプレもどきで歌わされたり
これでもかというほど変化するのです。

ここに豆腐の御用や官女組、鱶七、花四天まで登場し
人物、感情、立場、場面が入り乱れて
聴いてるほうは、とても面白いんですが
やってはるほうは大変どころやないと思う(;´∀`)

ですが、見事に語り分けられていた。

お三輪ちゃん、哀れでございましたね。
本人は喜び幸せに死んでいくから余計に哀れで(´;ω;`)

鱶七が北の方として葬ってくれるのが
唯一の救いでございましょう。

良いお浄瑠璃でございました。

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国立国会図書館デジタルコレクション
書誌ID 024122779

【人形】

◆玉志さん鱶七
すごく人形が大きくて、豪快で、強くて
両手を広げたら御殿の端から端まで届きそうやった。
そのくせチャーミングで色っぽくて、とても素敵でした。

◆勘彌さん求馬
少ない動きの中に、求馬と淡海をイケメンで表現せなアカンという
難しい役どころやと思います。

求馬モードでは娘2人を手玉に取り、
淡海モードでは姫の気持ちを利用して剣を手に入れようとする

女の側から見れば、残酷なことですが、
淡海にすれば、それが忠義です。

冷静にミッションを遂行する勘彌さん求馬は美しく、
しみじみ「イケメンは正義」と思わされたことでした。

◆勘十郎さんお三輪
膨らむはずのない首のほっぺがぷんぷん膨らんだり
充血するはずのない目が充血したり、
あっちゃへ動き、こっちゃへ動き
かと思えば手がだらりん伸びたり、
激しゅうございましたね(;・∀・)

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国立国会図書館デジタルコレクション
妹背山婦女庭訓 : 解説. 竹に雀の段
書籍ID:000000646898

◆勘壽さん豆腐の御用
ちょっとおっちょこちょいで、好奇心旺盛で
愛嬌たっぷりながらも、御殿の御用らしく上品で、
お三輪の気持ちを思うと笑うたらアカンのに
御用は観ていて楽しく、クスクスしておりました。

◆紋臣さん橘姫
求馬への恋心を選んで兄の恩を裏切る
けれどストレートには自分の行動を受け止められず
「帝のため」という大義名分で自身を納得させざるを得ない。
複雑な胸中を静かな動きで見せなアカンという
難しい役どころでございましょう。
紋臣さんGJ。

◆文司さん入鹿
文司さんといえば、敵味方に関わらず、
ちょけて(本人至って真面目でも観てるモンにはそう見える)
憎めん役どころというイメージがあるんですが
入鹿なども遣いはるんですね。
憎たらしゅうございました(褒め言葉です)

文哉さん玄蕃、玉誉さん弥藤次、
官女&花四天の皆さんも良かったです。

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文化デジタルライブラリー
収蔵資料 錦絵 妹背山婦女庭訓 豊原国周



皆様ご案内のとおり、15日以降は道行きから金殿まで
休憩なしの2時間上演となりました。
技芸員の皆様、関係者の皆様、そして観客の皆様も
大変なこととは思いますが、どうか無事に千穐楽を迎えられますように。

感染症の問題が終息に向かい
妹背山婦女庭訓の通し上演を楽しめる日が来ることを
心より祈念しております。