文楽とか浄瑠璃とか

文楽のことなど徒然に

カテゴリ: 文楽本公演(国立文楽劇場)

7月30日は国立文楽劇場へ
夏休み文楽特別公演第3部に伺いました。

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国言詢音頭(くにことばくどきおんど)は
元文2年(1737年)7月2日 曽根崎新地の茶屋で
薩摩藩士が遊女を含む5人を斬り殺したという
実際の事件を題材として書かれたサスペンス・スプラッターです。

原作は上中下の三巻、ですが、正本は刊行されず
現存するのは「下の巻 五人伐(ごにんぎり)」抜本のみ。

初演は天明8年、その後改作を経て、大川の段、大重(五人伐)のみの
2段上演が定着しました。
(※以上、2019/8/4 鬼鳥庵 久堀裕朗先生のお話から)

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大阪市立図書館デジタルアーカイブ
『竹本彌太夫遺文庫827 國言詢音頭 下の巻 五人伐の段』(床本)

物語自体は非常にシンプルなのですが、
演出のえげつなさ、気色悪さ、恐ろしさ、
そこに重なる悪の魅力を存分に味わえる作品です。

今年は久々に本水も使用。
なぶり殺し、はねた首の唇ねぶり回し
血まみれの解体ショーを見せつけられ
背筋を凍らせた挙げ句に本水でさらに冷やされるという、
猛暑の夜にピッタリの最高の仕上がりでした。

すでに日が経ってしまいましたが
感想を下記に少しだけ。
お席1列14番(井戸の前)にて
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国言詢音頭 
大川の段


浄瑠璃の中に心情描写はほとんど出てこない初右衛門の
心の内を微妙な人形の顔の傾きや目の動きで感じさせる。
人形遣いの醍醐味を、初右衛門登場からじっくり味わえます。
玉男さんの遣う人形はやっぱり色っぽい。

清十郎菊野、勘彌仁三郎 とても良い感じでした。
そして玉志伊平太の誠実。

町衆が都市を治めていた江戸期の大阪では
薩摩の名君、島津家に仕える侍であろうとも
どこか田舎者と馬鹿にされていた様子もよくわかります。

豆腐の御用のパロディなどもあり
ちゃらけた楽しさもある段ですが
段切りに全てが闇へと反転する。

  ハヽヽヽ初右衛門を灯蛾だと思ふか。

  ・・・・・・

  胸の空鞘打割りし、心の寝刃研ぎすまし、川辺伝ひに

睦さん、清志朗さん、ヨカッタです。

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五人伐の段(大重)

この段、本当に聴き応え、見応えがありました。
何というても玉男初右衛門のえげつなさ、色っぽさ。

皆の前で一旦は許すそぶりを見せ安心させた後で
恨みつらみ一切合切をその刀にまとわし全てを斬り殺す。

 蛍火に思ひ焦がれて身を焦がす、今日のうつゝは明日の夢

 ・・・

 桐の葉落とす秋の風。
 更ける夜すごく降る雨の、小止みもやらぬ瞋恚の邪念、
 また立戻る初右衛門

 ・・・

 我より先へ飛ぶ虫に灯火消えて真の闇
 
自分は夜の灯に近づき自らを焼いてしまう
蛾のような愚か者ではないとタンカを切った初右衛門が
灯りならぬ邪念の炎に自らを燃やし闇へと入り込んで行く。

真の闇に浮かび上がる邪念の炎。
降る雨に消える事もなく燃え上がる。
この対比のなんと美しい。

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菊野の首を腕で締め身体のいたるところを刀で突き切り
最後は腹にぐっと深く刺し込み、屍となったその首を切り落とし

 髻掴んで掻切る首、
 血に染む丹花の唇をねぶり回して念晴らし

おそらくは、どれほど金を遣っても
菊野は八右衛門に唇は許さんかったのやないでしょうか。

田舎侍は、それでも、遊女の嘘にのぼせ上げ
とうとう御用金にまで手を付けてしもうた。

そこまでして恋い焦がれたその唇から
まるで大川の水が溢れ出るかのように
自分を嫌う言葉が途切れる事なく流れ出た。

憂さ晴らしどころやない。
どれほどねぶり回しても全く足らん、
その唇を切り取って食べてしまいたいくらいには
思うていたのやないでしょうか。

このシーン、ほんまにヨカッタです。
床も手摺も、めちゃめちゃえげつなかった(褒め言葉です)

この後の連続殺人もそれはそれはえげつないんですが
やはり菊野惨殺がコアやね。
この勢いで後は全部殺しまくる。
仲居の解体ショーなど、凄まじかったです。

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ラストシーン、井戸で足を洗う場面は
ドキドキするほど美しかったです。

人形の足がこれほど色っぽいとは知らんかった。

なんでこんなに色気を感じたのか全くわかりませんが
ここだけでも繰り返し何回も見たいと思うほど。

やがて足を洗い刀にサラシを巻きつけた八右衛門は
下駄を履き、蛇の目をさして、どこか風流に、どこか美しく
大きく笑って去って行く。

  山寺の春の夕暮来て見れば
  ハヽヽヽヽヽヽ、アリヤ寒山寺諸行無常の鐘の声、南無阿弥陀仏

  弥陀仏の西の国へと急ぎ行く、
  不敵なりける次第なり。


****************

初右衛門というキャラクターがあまりにも魅力的やったので
感想の中心が彼になってしまいましたが、
清十郎菊野、おすみ紋臣の絡みなど、
とても良い雰囲気で楽しませていただきましたし
仁三郎とおすみの絡みもええ味を出していはりました。

織さん、藤蔵さん、
千歳さん、富助さん、清允さん
皆さん、ヨカッタです。

特に大重。

素晴らしかった。
有難うございました。



7月23日は国立文楽劇場へ
夏休み文楽特別公演第一部に伺いました。
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まず最初に、今年の親子劇場ですが、一言で申しますと
「めっちゃ( ・∀・)イイ!!」。

本気本物のガチ文楽です。
浄瑠璃が音曲ということもよく分かる。
ちびっ子が楽しめるような仕掛けも満載で
素晴らしいエンターテイメントになっていました。

以下、簡単に感想を。

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まずは小住ンの説明から。
渡し場に至る経緯、すなわち、若い男女の痴情のもつれを
ニコニコしながら、ちびっ子たちに話して聞かせる小住ン。
ステキでした(*´ω`*)

日高川入相花王 渡し場の段

三輪さんやっぱり美しい。
大好きなこの段を三輪さんで聞けて嬉しかったです。

  さては悋気嫉妬の執着し、邪心執念いや勝り、
  我は蛇體となりしよな。もはや添はれぬこの身の上、
  無間奈落へ沈まば沈め、恨みを云ふて云ひ破り、

  取り殺さいでおかうか

どんどんヤバくなっていく三輪さんの清姫に
文昇さんの遣いが重なり
ガブの瞬間はゾッとするほど怖かった((((;゚Д゚))))。

芳穂さん、美声が響いておりました。
勘市さん、船頭をとても丁寧に遣っていらした。
指先の細かい動きまで、しっかり見せて頂きました。

咲寿君、良かったです。
ソロパートはワンフレーズでしたが、声がよく伸びて
とても美しく感じられました。

亘さん、とても落ち着いていらした。

大蛇となった清姫が川を渡りきったシーンは美しかったです。

清姫が愛だけで安珍を追いかけていた渡し場は真っ暗で
川を渡りながら、愛と憎しみに揺れ動いた清姫の心が
やがて対岸にたどり着き、憎しみMAXになった瞬間
ぱっと舞台の幕が落ち、光の中、桜が咲き乱れる。

これを陰陽というのでしょうか。
相反するものをひとつところに置くことで、それぞれを引き立てる。

浄瑠璃の構成や文楽の舞台にはこういう演出が多くて
本当に素晴らしいですね。

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文楽ってなあに

人形遣い解説は「プロレラーが登場するように(by玉翔君)」
客席の後ろから、ちびっ子たちとハイタッチをしながら人形が舞台へと。
盛り上がりました。人形遣い体験、やっぱり面白い。
浴衣を着た、おやゆび姫みたいな可愛らしい女の子、
ようがんばって遣いはりました(*´ω`*)

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かみなり太鼓

織さんの「あつい、あついぞ、あついで、あつい」から
玉佳トロ吉が雲の上に帰るまで、とにかく面白くて笑いっぱなし。
浄瑠璃も人形も全てがよろしく、特にお三味線は、
清介さんワールドを心ゆくまで堪能させていただきました。
仕舞いのオチまで、あっと言う間の1時間弱でした(^0^)

笑いどころが山のようにあって、
ツボを言い出すとキリがないんですが、
その中でも、ウチ的に一番ツボったのは、やっぱりお母ちゃん。
あの肩衣はいつの間に支度したんや(^0^)

もっともっと細かく、如何にこの文楽が面白いかを
全力で紹介したいのですが

「うそか ホンマか わからぬはなし
 よそで いうたら あきまへん」

ご興味のある方はぜひぜひ、文楽劇場にお運びいただき
この素晴らしいエンターテイメントをお楽しみ下さいませ。
大きいお友達1人でもノープロブレムです。

チャーミングな緞帳チェックもお忘れなく(*´ω`*)

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楽しい親子劇場のおかげで、
今年の夏文楽はとても良い始まりになりました。

来週はいよいよ、国言詢音頭そして仮名手本忠臣蔵へ。
良い文楽になりますように(^人^)





4月23日は文楽劇場へ
平成31年度4月文楽公演 第2部へ伺いました。

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お席1列16番にて

近頃河原の達引
亀山家の勘定役横淵勘左衛門が出入りの商家・井筒屋の若ボン伝兵衛と馴染みの遊女おしゅんに横恋慕。そして伝兵衛を騙し贋金遣いの罪を着せ三百両を騙し取り、将軍家所望の茶入を盗んだ事を知られたため伝兵衛殺害を企てますが、反対に伝兵衛に殺されてしまいます。この一件でおしゅんは京の堀川で猿回しを生業とする実家に帰され、兄と盲目の母は、伝兵衛と心中するのではと心配します。そこへ伝兵衛が訪れ、2人の覚悟を知った兄は猿回しで伝兵衛&おしゅんの旅立ちを祝い見送るのでした。(by プログラム)

四条河原の段

勘左衛門と伝兵衛のやり取り、からの殺しが見せ場です。
碩君の歌う上方唄が、その残酷なシーンをどこか夢のような
不思議な美しさを感じさせる。

文楽にはこういう「殺しの美学」的な場面が多いのですが
これもそうでしょう。聴き応え、見応えがありました。

碩君はお唄も上手い。この方の成長が本当に楽しみです。

靖さん、錦糸さん、とても良かったです。
錦糸さんのお三味線はひと撥ごとが美しい。

玉勢さんの勘左衛門は随分人形が大きくて驚きました。
左はどなたがお遣いでしたか。
この方が人形を押し上げて大きく見せていた。気がする。
美しかったです。

勘彌さんの伝兵衛は安定の色男でした(*´ω`*)

堀川猿回しの段

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全て良かったです。
文楽らしい文楽をじっくり味わった、そんな感じ。
そこにいる誰もが互いを思いやる、情の塊のような。

浄瑠璃は音楽なんやということもしっかりとわかります。
清介さんのお三味線がたっぷり聴けて嬉しかった。

猿回しは賑やかになればなるほど、
お猿が可愛く動けば動くほど
悲しみがどんどん深まって行く。
思い出してまた泣きそうになってしまいます。

この浄瑠璃はCDを持っていて、時どき聞いているんですが
やっぱりライブがいい、文楽は劇場で楽しまなあかん
改めてそう思わせてくれた、素晴らしい一段でした。

有難うございました。




4月23日は文楽劇場へ
平成31年度4月文楽公演 第2部へ伺いました。
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お席1列16番にて

祇園祭礼信仰記
小田信長が足利義輝を滅ぼし、金閣寺に立て籠もる松永大膳を討伐するまでの物語。ストーリーは此下東吉(豊臣秀吉)の活躍、出世が中心に展開していきます(by プログラム)

金閣寺の段

通称「碁立て」。
碁を打つ大膳、東吉、雪姫の心情、会話の中に碁石や用語が巧みに読み込まれています。

 ・先手の石
  「碁立大膳は、先手の石打つや現のうつの山」

 ・一間飛び
  自分の石から1路または2路離れた位置に打つ手
  「一間を忍ぶ雪姫が」
  「一間飛びに入り込んだも、松永を討って取る」
  ikkentobi
 ・白石
  白い碁石

  「雪姫が顔の白石、返事とはマア嬉しい、
  抱かれて宿石(ねばま)の返事ぢゃな」

 ・中手
  相手の眼の急所に打つ手
  「この東吉が中手を入れて」
  nakade
大膳が一間となりの雪姫に気を取られてるうちに
東吉に中手を打たれて負けてしまう、そんな感じでしょうか。
囲碁をご存知な方ならこの段は随分面白いのやないかしら。

ストーリーそのものは
囲碁を通して3人の心理を静かに描き
⇒負けた大膳碁盤を投げる
⇒東吉さらっと流し
⇒井戸の碁笥を取り出す

という感じで、シンプルなんですが
人の心の静動が複雑に入り混じった面白い浄瑠璃です。
その分難しい。
織さん、藤蔵さん、エネルギッシュでよろしゅうございました。

玉志松永大膳、ゲスくて乱暴でエロくて最高でした。
悪役が魅力的に遣えるって、ほんまに素敵です(*´ω`*)

清十郎雪姫、気品がありますね。

急遽代役となった簑紫郎十河軍平(加藤清正)、
代役とは思えん、落ち着いた美しい遣いに
普段からご精進なさってるんやなあとしみじみ思わされた事でした。

玉助東吉もイケメンで良かったです。

爪先鼠の段

滝に龍が映るわ、
絵の鼠が縄を食いちぎって花びらになるわ
舞台装置は上へ行ったり、下に行ったり、
スーパーフィクション&大仕掛け&大スペクタクルな一段です。

金閣寺の心理戦から一転、体育会系になるわけで
この対比が本当に面白い。

そして文楽のご都合主義的様式美、
「十河軍平、実は加藤清正」もあり、これもまた面白い。

前は千歳さん、富助さん 
後は芳穂さん、清志郎さん

迫力いっぱいでよかったです。

こういう仕掛けの大きい段は、人形遣いさん大変やと思うのですが
皆さんバッチリでした。鼠ちゃん、可愛かった(*´ω`*)

※近頃河原の達引は別エントリーにアップします。




4月26日は文楽劇場へ
平成31年度4月文楽公演 第1部へ伺いました。
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仮名手本忠臣蔵の通しは初めてで、
それも大序からというのは本当に嬉しく
まるで遠足に行く子どものように、
朝は4時頃に目が覚めてしまいました(〃∇〃)

仮名手本忠臣蔵は皆様ご存知「忠臣蔵」の人形浄瑠璃バージョンですが、
元々「赤穂事件」と言われていたのが、この文楽の大当たりをもって
「忠臣蔵」と呼ばれるようになったそうです。(By プログラム)

勿論、創作ですから、実際の赤穂事件とは違いますが、
古典の逸話挿入等、様々な脚色により
途方もなくダイナミックな物語になっています。

あらすじや時代背景、相関図などは文化デジタルライブラリーに
特設サイトがありますのでぜひこちらをご覧下さい。

◆文化デジタルライブラリー 仮名手本忠臣蔵

コンテンツが充実しているので
・全部チェックするのに、たぶん丸一日、
・そこから色々考えながら再度チェックして行くのに数日、
・そして文楽を楽しんでから復習するのに数日、
・シーンを思い返してどっぷり浸かるのに数日
・酒のアテにするのに(以下略
楽しめると思います。
ぜひご覧頂きたいサイトです。

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感想を簡単に。
お席1列17番にて

大序
鶴岡兜改めの段

暦応元年、室町幕府を開い足利尊氏により造営された鶴が丘八幡宮に
訪れた弟の直義を、師直、塩冶判官、若狭助が出迎えています。
尊氏からの新田義貞の兜を宝蔵に納めよとの命令を伝えますが
師直はどれがその兜かわからぬと反対します。
この命令に、新田の残党を降参させる尊氏の計略を察した若狭助は、
師直の反対を軽率と非難し、2人に不穏な空気が漂います。
それを塩冶判官が引き取り、かつて後醍醐天皇に仕え、
義貞に兜を取り次いだ、自分の妻、顔世御前なら分かるだろうと、
検分役に顔世を呼びます。顔世が見つけ出した兜を収めるため、
直義は若狭助と判官を伴い宝蔵に向かいます。
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写真:文化デジタルライブラリー

大序、その幕開きは壮観です。
人形遣いは黒衣で、太夫も、お三味線も御簾内ですので
身じろぎもしない時代物の格調高い人形、そして舞台美術の美しさを
存分に楽しめる。これから大いなる物語が始まるのだという期待感が
否が応にも高まる中、若い太夫が順番に、悲劇の発端を語り始めます。

亘さん、気負いがございましたでしょうか。
最初の第一声、大役ですものね。
段々と落ち着いて来てヨカッタです。
小住ンはどんどん良くなってる。
聴く度に腹が太くなっている気がします。

碩君は落ち着いていました。
まだお若いので、高校野球のような語りも期待したりするのですが
そういうのは若手会や霜乃会などでなさって行くのでしょう。
またそちらにも伺えればと思います。

咲寿君には、頑張って欲しいところです。

恋歌の段

顔世御前に横恋慕する高師直は、その顔に似合わず恋文なぞを
顔世に無理くり渡そうと迫ります。顔世御前は困惑至極。
そこへ若狭助が戻って機転を効かせ、顔世は難を逃れます。
師直は恋路の邪魔をされた腹いせに若狭助に罵詈雑言を浴びせ、
そのあまりの酷さに若狭助は耐えきれずすわ抜刀しかけるのですが
直義帰館の知らせが入り、互いに「クソッタレ!」と思いつつ、
2人は役目に戻ります。
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写真:文化デジタルライブラリー

この高師直の横恋慕こそが、殿中刃傷からの切腹、お家断絶
赤穂浪士の仇討ち、そして全員の切腹という、ありえない悲劇の発端です。

序章であるため、人形はまだ黒衣ですが、
勘十郎師直は悲劇を引き起こすには充分な、エゲツなさ、いやらしさ
そして執念深さを存分に醸し出しておりました。(褒め言葉です)
耐える簑紫郎顔世御前、短気が過ぎる文昇若狭助もよかったです。

二段目
桃井館力弥使者の段


若狭助の屋敷では師直との一件が使用人の間でも話題になっています。
家老加古川本蔵が、使用人の噂話を諌めるところへ
妻・戸無瀬、娘・小浪も来て若狭助の様子を話します。
そんな屋敷へ小浪の許嫁である大星力弥が使いに訪れ、
若狭助はその口上を受け取ります。
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写真:文化デジタルライブラリー

芳穂さん、清𠀋さんヨカッタです。
芳穂さんはお声がいいので、お姫様などはいつも素敵なのですが
今回は加古川本蔵のようなドスの効いた低い声も出ていて
かと思えば、力弥のような若侍も美しく
戸無瀬の仮病も微笑ましく感じました。

玉輝本蔵はどっしりと、戸無瀬簑一郎は良い具合の年増で。
紋臣小浪は初々しく、可愛らしく、その割に積極的で

  「ご口上の趣をお前が口から私が口へ、
   直に仰って下さりませ」
   と擦り寄れば

それを受け、イケメン玉翔力弥
 
   身を控へ
   「ハア、これは/\無作法千万。
    惣じて口上受け取りしは行儀作法第一」
   と畳を下がり手をつかへ

若狭助の登場により、戸無瀬の仮病も虚しく、
若い二人は手も握らぬまま、この場は終わってしまうのですが
浄瑠璃と人形がぴったり合うて、
この段は随分ドキドキさせられたことでした(*´ω`*)

本蔵松切の段

若狭助は恥辱を晴らすため、明日、師直を切り捨てると
本蔵に打ち明けます。お家存続に関わる一大事に、本来なら
反対して然るべき家老でありながら、主の性格を熟知する本蔵は
止めもせず、無念を晴らしなさいと松の枝を切り落として見せます。
そして若狭助から今生の別れを受けた本蔵は、主を見送った後
戸無瀬と小浪が止めるのも聞かず、馬に乗り駆け出して行くのです。
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写真:文化デジタルライブラリー

三輪さん、清友さん、よかった。
お声のいい三輪さんの、こういう語りがずっと聞きたかった。
今回やっと聴けて嬉しかったです。
人形はこの段を通して、皆さんよかった。
本蔵が馬に乗るシーン、雄々しくてカッコよかったです(*´ω`*)。

三段目
下馬先進物の段


朝四時、師直は鷺坂伴内を伴い登城し、御門の前で、
どうやって顔世を落とすか(ラブの世界に)相談しています。
そこへ本蔵が訪れ、すわ主の恨みを晴らしに来たかと色めく二人に
袖の下も怠り無く、金銀巻物を贈り、若狭助の役目が無事勤まるよう頼みます。
すっか気を良くした師直と伴内は本蔵を城内へ案内するのでした。
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写真:文化デジタルライブラリー

小住ン、寛太郎くん、よかったです。
この段はいわゆるチャリ場(おもろおかしい場)ですが
本来、こんな事は嫌うであろう無骨な本蔵が、主のため、
お家のためにやらざるを得ない、その苦渋もありましょう。
次回に期待します。

師直という男のえげつなさは段を重ねるごとに増幅する仕様で
人形もその都度、どんどんえげつなくなって行く。
勘十郎師直は、ほんまにえげつなくて強欲でエロくていい。
文司さんはこういうお役をすると本当に上手いですね(*´∀`*)
伴内の小物っぷりがよわかります。
本蔵は安定のお遣いでした。

腰元おかる文使いの段
 
塩冶判官が早野勘平を伴い登城したすぐ後を追うように
勘平の恋人おかるが顔世の文箱を届けに
(それを口実に勘平に会うため)やってきます。
おかるが勘平に文箱を渡すと、城内から勘平を呼ぶ声が。
それはおかるに横恋慕する伴内で、勘平のいない間に
おかるに言い寄り抱きつこうとします。
すると今度は伴内を呼ぶ声が。それは騙されたと知った勘平の
仕返しでした。そしておかると勘平は、人目を忍んでデートをするため
2人でその場を立ち去っていきます。
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写真:文化デジタルライブラリー

勘平に会いたい一心でおかるが持ってきたこの文箱こそが
悲劇の発端たる邪な横恋慕の厄介な嫉妬心にガソリンを注ぎ火をつける
チャッカマン的役割を果たしてしまいます。

おかる&勘平の恋が無ければ、顔世からの文は届く事もなく
これほどの大事は起こらなかったでしょう。

この物語は武家の一大事を描いているにも関わらず、
エライことを引き起こす発火剤が「恋の炎」なのですね。

希さん、清馗さんに押されている感じでした。
その分、強くなっていてヨカッタです。

玉佳勘平、一輔おかる、この2人のバカップルが
今回の公演を通じて、どれほど観客を魅了したことか。
願わくば勘平切腹までこの配役で、そう思わせるほどでした。

玉佳さんは、本公演中、休み無く主要な役どころの
左を遣っていらっしゃったとお見受けします。
大変な事です。でも気張って欲しい。
いつか玉佳勘平切腹が見たいです(*´ω`*)

殿中刃傷の段

本蔵の機転によって、若狭助は抜刀することなく、
師直から謝罪を受け、鶴が丘での一件は無事落着します。
しかし、師直の横恋慕を知らぬ塩冶判官から顔世の文を渡された師直は
自分の恋を拒絶する内容に激怒、つれない恋の恨みつらみ全ての矛先を
判官に向け、ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせます。そして耐えかねた判官は
殿中にも関わらず抜刀、師直に傷を負わせてしまうのです。
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写真:文化デジタルライブラリー

ダイナミックなシーンです。
凄い見せ場の連続で、段切の判官が本蔵に止められるシーンなど
今にも人形が客席に飛び出して来そうな迫力です。
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写真:文化デジタルライブラリー

この日は清治さんが交通事情による休演で
急遽、藤蔵さんがお三味線を弾かれたのですが
呂勢さんVS藤蔵さんで、殿中刃傷の凄まじい迫力を
描き出してくれました。

人形は和生判官、勘十郎師直、そして玉輝本蔵
ツメやんたちも一体になって迫力溢れる舞台を見せてくれました。
この段はやっぱり凄い。強い。

裏門の段

御殿は刃傷の騒動で門が全て閉じられました。
おかるとラブラブしていた勘平は慌てて裏門に駆けつけ
門を叩いて事の次第を尋ねます。そして事態の大きさに気が動転し
自害しようとするのですが、「ここで死んでも詫びにはならん」と
おかるに諌められ、揃って山崎にあるおかるの実家へと落ちて行くのです。
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写真:文化デジタルライブラリー

睦さん、勝平さん、よかったです。
勝平さんは、こんなに力強いお三味線をお弾きになるのかと、
良い意味で、驚かされた事でした。

ここでも玉佳勘平、一輔おかる、そして文司伴内が魅せてくれました。

最前のバカップルは、すわ切腹かと一気にシリアスに。
この対比の何と素晴らしい。
そこに伴内が絡むことで観客も少し息抜きが出来ます。
ここで息を整えておかないと、四段目は大変なことになるよし。

四段目
花籠の段


鎌倉にある判官の屋敷は閉門となり、沙汰の言い渡しを待っています。
顔世は夫を慰めようと桜を花籠に活け、力弥が傍に控えています。
今回の原因や沙汰を予想し、言い争う2人の諸士頭に、
顔世は原因は自分にあると話し、押しつぶされそうな胸の内を語ります。
そして上使が到着します。
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写真:文化デジタルライブラリー

文字久太夫改め藤太夫、團七さん、とても良かったです。
顔世御前の苦しい胸の内、諸士の心配、苦渋、そのような様々が
ようわかる。簑助師、顔世御前の憂いだ表情が素晴らしい。
そしてこの段も、玉翔力弥は変わらずイケメンで良かった。

塩冶判官切腹の段

上使の前に判官が現れます。あまりにも厳しすぎる沙汰に
諸士がどよめく中、判官は冷静に、既に覚悟の上、羽織の下に
支度をしていた白装束を表します。
家老、由良助の到着を待ち望む中、静かに厳かに切腹の支度は整えられ、
もはやこれまでと判官が腹に刀を刺した瞬間、由良助が登場。
無念を晴らして欲しいと言い残し息絶えた判官の亡骸は、光明寺へと
送られて行きました。
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写真:文化デジタルライブラリー

ここは「通さん場」といい、昔からずっと、
客席の出入りは一切禁じられています。
演者と観客が一体となって緊張感を創り出さなければ
このシーンは成立しないからでしょう。
この緊迫感は、言葉では説明出来ないので、
ぜひぜひ、劇場にお運び頂ければと思います。
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写真:文化デジタルライブラリー

咲様、お正月の休演から復帰なさって以来、とにかく素晴らしい。
燕三さんもです。

沈黙の場面が多いにも関わらず、語りと三味線、
そして人形の動きがしっかりと合う。 
どうやって呼吸をあわせているのか、不思議でなりません。
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写真:文化デジタルライブラリー

和生さんの切腹、絶品です。
気品に溢れ、ただひたすらに由良助を待ち、
やっと参上した家老を前に、無念を吐露し、そして息絶えて行く。

その亡骸に顔をスリスリする顔世御前の、なんと悲しく美しい。

そして主を見送る由良助、諸士たち。
音のない世界で、一人遣いのツメやんの人形が
劇場いっぱいに悲しみを満たして行く。

城明渡しの段

門を出た由良助は判官の刀で提灯の紋を切り抜き
白い紙に丁寧に包んで懐に収めます。
そして城を振り返り立ち去って行くのです。
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写真:文化デジタルライブラリー

切腹からの城明け渡しへと、長い沈黙の中に
滲んでいく由良助の無念、

玉男由良助、重厚です。
後ろ姿も素晴らしい。

そして門を振返った瞬間
「ハッ」
掛け声で人形が大きく上がると同時に

  『はった』と睨んで

碩君が沈黙を真っ二つに切り裂いた。

鳥肌が立ちました。
ようやった!お見事でした。


*************************************

今回は大序から四段目まででしたが、正直言うて、
これだけでどっぷり疲れてしまいました。
心地好い満足感と疲労感です。

昔は大序から十一段目まで、連日通し興行やったのでしょうが
なさるほうも、聴く観るほうも、どんだけ達者やったんやと思わされます。

当初3回に分けての通し公演にはクエッションでしたが
今ではそれで良かったと安心しています。体力が持たんもの(ノ∀`)。

次は夏ですね。既に配役も発表されました。
チケット争奪、大変そうですが、どうかエエお席が予約出来ますように。

五段目から七段目まで、楽しみです。
よい文楽になりますように(^人^)



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