文楽とか浄瑠璃とか

文楽のことなど徒然に

カテゴリ: 文楽

1月8日は文楽劇場へ
初春文楽公演第2部、加賀見山旧錦絵に伺いました。

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加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)は
江戸中期、加賀前田藩で起きたお家騒動に取材した
女忠臣蔵とも呼ばれる仇討ち物語です。

原作は全十一段の大作ですが、
今回は六段目、七段目を中心とした
四つの段が上演されました。

お席1列17番にて

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まず全体の感想として、初春を飾るに相応しい
聴き応え見応えのある、素晴らしい文楽だったと思います。
床も手摺も、秋の山科閑居に続いて、最強の布陣で
凄い迫力でした。
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◆草履打の段

清治さんのお三味線のリードで
若手5人の太夫さんが、とてもしっかり語っていらして、
聴いていて嬉しかったです。

6月の若手会のあの感動が蘇るような、
そんな浄瑠璃でございました。

靖さん、代役お疲れ様でした。
呂勢さん、どうか1日も早くご回復なさって
語りを聴かせて下さいますように。

玉男さん岩藤、女形を遣われるのは初めて見ましたが
骨太の、品格あるイケズがたまりませんでした(*゚∀゚)=3

和生さんの尾上、堪えて堪えて堪えて涙(´;ω;`)

文哉さん、鷺の善六、良かったです。

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◆廊下の段

噂話に花を咲かせる腰元からラスボス岩藤、
お家乗っ取りを企む弾正、戸惑うお初まで

短い段の中に癖のある登場人物が複数現れ、
その場の雰囲気も都度変わる、難しい一段ですが
籐さんVS團七さん、その難しさを全く感じさせない
ステキな浄瑠璃で、すっとそこに入っていけました。

玉輝さん弾正、めっちゃ悪い奴っぽくて良かったです。
そして、勘十郎さんのお初はかいらしく
玉男さん岩藤はますますイケズがパワーアップ。
その恐ろしさたるや

やっぱり「奥」の話はこうでないと!

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◆長局の段

凄かった。

和生さんVS千歳さんVS富助さん
この3人の文楽は
客席にいるこちらまでキリキリさせられるような凄みがありました。

レースに例えるなら、いつクラッシュしてもおかしくない
ギリギリ限界一歩手前のところで、長局という段を3人が走り切る
その姿を、唸りを、ただ見守りながら脂汗を流す
そんな感じでしたでしょうか。

バトンを受け継いだ織さんVS藤蔵さん、そして勘十郎さんは、
そのギリギリ感から一気にエンジン爆発、ロックな文楽を
堪能させていただきました。

◆奥庭の段

錦糸さんのお三味線が素晴らしい(*´ω`*)
靖さんもヨカッタです。

勘十郎さんお初と玉男さん岩藤の戦い
どちらが勝ってもおかしくない、
一瞬、岩藤が勝つかと思わせて
お初の尾上を思う気持ちと若さがわずかにリード
無事仇討ちとなった時にはホッとしました。

そしてエンディングに登場した玉佳さん安田庄司が
イケメンすぎて。めちゃくちゃカッコよかったです。

忍び当馬を遣う玉彦さんのプレッシャーは
えげつなかったのではないかと思いますが
良く遣っていらっしゃいました。

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草履打・廊下・長局・奥庭の段まで
床も手摺も、見事な文楽で、存分に楽しませて頂きました。
おかげで、とても良い文楽始めとなりました。
有難うございました(*´ω`*)



11月24日は国立文楽劇場へ

仮名手本忠臣蔵の三分割通し公演の第三回目
千穐楽へ伺いました。

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八段目 道行旅路の嫁入
九段目 雪転しの段 / 山科閑居の段
十段目 天河屋の段
十一段目 花水橋引揚より/光明寺焼香の段

床も手摺も時代物らしいロック感満載で全段とても良かったです。

お席2列16番にて

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山科閑居の段

あんたとこのご主人お父さん賄賂野郎やんと
お石に本蔵をコケ落とされた挙げ句
力弥との祝言を断られた小浪&戸無瀬母娘が
もう死んだるわ!と母娘心中の仕度を始めた所で
お石が祝言さしたるさかい本蔵さんの首頂戴と三方を持ち出し
そこにやって来た本蔵が何ぬかすねんこのオバハンと
お石をボコって組み伏せた所で力弥が薙刀で本蔵の腹を突く。

そこに由良之助登場し
「本蔵はん力弥に殺される目論見達成やなあ」

本蔵は虫の息で「あん時はすまんかった。僕死ぬし。
可愛い娘、祝言さしたって。引き出物もつけるさかい」
と吉良邸の図面を差し出し力弥と由良之助は大喜び。

由良之助は吉良邸へ入り込む手段を披露し
討ち入りの成功を確信した本蔵は息絶える。

亡骸にすがりつく戸無瀬の傍らで
小浪と力弥はお石の酌で三三九度。
祝言をあげた2人はそのまま夜伽の別室へ。
そして由良之助は虚無僧姿に変身し
ほな先に堺行っとくわノシ

で、この段は幕になります。

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はっきり言うてクレイジーです。

血しぶきが飛び散った血まみれの座敷で
父親の亡骸に母親がすがりついて泣いてる隣で
父親を殺した男と娘は祝言をあげ喜んで夜伽に向かうとか

登場人物全員ロックで狂ってる。

でも泣いてしもうたんです。
特に本蔵が刺されたあとは、どうしようもなく悲しいて
ボロボロと涙を流しておりました。

千歳さん、富助さん
藤さん、藤蔵さん
和生さん、玉男さん、勘十郎さん、勘彌さん
一輔さん、玉佳さん

床も手摺も最強の布陣で素晴らしい一段を堪能させていただきました。
有難うございました。

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天河屋の段

「天河屋義平は男でござる(`・ω・´)」で有名な一段です。

口、小住ンと寛太郎君はとても強くてカッコ良かった。
お若い2人の浄瑠璃が強いと凄く嬉しくなりますね(*´ω`*)

奥、靖さん、錦糸さん、良かったです。

玉也義平、凄くカッコよかった。
バッチリ決まっておりました。

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花水橋引揚より光明寺焼香の段

雪景色の中、本懐を遂げた浪士たちが一列に並ぶ
大序と対になったようにも思える、このシーンは壮観です。
ここでやっと玉志さん若狭助、馬に乗って登場(*゚∀゚)=3
美しかった。

ズラッと並ぶ浪士の主遣いはお若い方が多くて
左はお師匠さんや兄弟子の皆さんが遣うてはるんかな
などと考えて勝手にドキドキしておりました。

玉男さんの由良之助は、八段目から十一段目まで
ずっと静かな動きの中で、多くの事を表現されていた。
お見事でした。

お浄瑠璃も揃っていて良かったです。
碩君、よいお稽古をされているようで何より。
咲寿君も、調子を戻して来たようで嬉しく思います。

今回の忠臣蔵は、若手太夫の皆さんが良く語ってらした。

皆さん益々ご精進あそばして、
良い太夫さんになって下さいね(*´ω`*)

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忠臣蔵の三分割公演は、当初いろいろ言われていましたが
ウチのように堪え性のないモンにとっては有り難い公演形式でした。
途中、時間があくことで自分なりに情報も補えますし
これはこれでアリかなと。

技芸員の皆さんは、春、夏、秋を通して
忠臣蔵モードを維持せなアカンので
大変やったと思いますが、
おかげで、素晴らしい千穐楽を
存分に楽しませて頂くことが出来ました。

皆さんお疲れ様でした。
有難うございました。

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初春公演のチケットは今日予約しました。
好きなお席です。
配役の一番最初に玉志さんと三輪さんが並んでるのが
個人的にとても嬉しい(*´ω`*)

来る年も、良い文楽になりますように(^人^)


11月21日は国立文楽劇場へ
文楽公演 第一部「心中天網島」に伺いました。

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心中天網島は、亨保5年に起きた心中事件を題材に
晩年の近松門左衛門が書き上げた浄瑠璃です。

既に心中を決意している2人と、なんとかして止めよう、
命を救おうとする周囲の人々が織りなす人間模様を描き出した傑作で、
多くの方々が、この浄瑠璃について、研究論文や解説、コラム、
エッセイなど、様々な形で考察、感想を述べていはります。

私も文楽を観る前に、数冊、関連書籍を読んでから伺いました。

すでに日が経ってしまいましたが感想を下記に少しだけ。
お席1列16番にて

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心中天網島 
河庄の段


この段は紋日の北新地から始まります。
お三味線のツヤっとした賑やかさ、浮かれた様子とは逆に
太夫の語りは、冒頭から、小春の死を暗示します。
始まりと同時に、結末を観客に聞かせているのですね。
そんな不穏な空気が漂ったところに、小春が静かに登場します。

そこから先は、小春と孫右衛門のやり取り、
治兵衛のDV、本心を偽る小春の悲しみなど
最初から最後まで、しんどいシーンの連続なんですが

幸いに(なのか)、途中、ジャイアン太兵衛と善六の
クソ憎たらしいコミカルなやり取りが、一息つかせてくれます。

花車や後輩女郎、下女など、脇役一人ひとりのキャラも立っていて
語り分ける太夫さん、お三味線さんは大変やろと思うのですが

織さん、清介さん、ヨカッタです。
口三味線は笑いました。おかげで和みました。

津駒さんと清治さん、とても良かった。
清治さんのお三味線は、いつもながら華麗で
悲しみにくれる小春の涙が、キラキラと輝いて
落ちる様が見えるようでした。

人形は、まず、簑助さん小春。絶品でした。
お師匠様が使う小春に、お弟子さんである
勘十郎さん治兵衛がビンタを食らわす
あのシーンは、色んな意味でドキドキした(;・∀・)

簑二郎さんの小春も、もちろん良かったです。

勘壽さんが太兵衛をお遣いになられていたのは驚きでした。
こういう役も遣わはるんやなあと。

勘壽太兵衛、清五郎善六コンビは
絵になっていて、見ていて楽しかったです。

紋臣さんの花車はとても良かったです。
原作を読んだ時、正直、花車は印象が薄く、
相関図にも載せなかったのですが
ここまでキャラが立ってるとは思わんかった(*´ω`*)

孫右衛門は、河庄のメインキャラともいうべき役で
静かな動きの中に、多くの事を表現せなあかんという
魅力的なぶん、難しい役どころです。
玉助さん、どうかご精進下さいますように。

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紙屋内の段

紙屋の内と外をテキパキ取り仕切るおさんの傍らで
小春と別れた治兵衛がコタツに入って昼寝しているシーンから
この段は始まります。

小春との事で色々あったけれど、治兵衛は戻ってきた。
やっと今まで通りの日常がまた始まる、と、思わせて
物語は急転直下、

小春の死を予感したおさんが、夫の面目、
女同士の義理のために、仕切り金から着物まで、
全てを投げ出して、夫の愛人の命を守ろうとします。

その時、離れかかっていた治兵衛とおさんの心は一致団結、
夫婦の繋がり、綱をぎゅっと結び直したかに見えたのですが、

怒り心頭の舅が来て、おさんを連れ帰り
再び結びついた二人の綱は解かれてしまいます。

とにかく登場人物も多いし、場面転換も動的で、
簡単に筋を書いてるだけで疲れるような
ダイナミックな一段です。

人形は、とても良かった。

この段のメインキャラはおさん。
清十郎さん、素晴らしかった。
「そうや!これがおさんや!」と、
思わず心の中で、つぶやいておりました。

舅五左衛門の玉輝さんも良かった。

勘十郎さんの治兵衛は勿論です。
コタツに入って涙を流す、あの表情が何とも色っぽく
「これは小春も惚れる罠」と、思うてしまいました。

大和屋の段

満月の真夜中、透き通った冷たい空気の中で
治兵衛は小春と、心中の段取りを取り付け
全ての支払いを済ませます。

心中を心配する孫右衛門は、丁稚に勘太郎を背負わせ
大和屋を訪ねますが、治兵衛を見つける事は叶わず。

その姿に手を合わせ、治兵衛と小春は心中へと向かうのです。

咲様、燕三さん、素敵でした。

咲様のお声は、すっと劇場に響いて
燕三さんの、お三味線とともに
劇場を、透き通った冷たい夜に変えてしまいます。

そこで起きている出来事は
切なく、儚く、悲しいのですが
禊のような美しさを感じておりました。

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道行き名残の橋づくし

この道行きは本当に美しい。

原作に登場する橋を、全ては謡いませんが、
舞台では、多くの橋を超える様子が展開されます。

三輪さんがリードするお浄瑠璃は本当に美しく
うっとりと聴いておりました。

いよいよ心中で、治兵衛に手を合わせる
小春の表情は、何とも言えず良かった。
今も思い出してしまうほどです

なのに、ラストシーンはどこか現実的で生々しく
2人は苦しみの中で死んでいく。

このバッサリ感。いいですね。
やり切れなさを残してくれる。

見事なエンディングにございました。


*********

文楽はここで終わりますが、原作では
2人の亡骸は漁師の網にかかって発見されます。

この結末から、
近松は2人の魂を見捨てはせんかった
最後の最後に救うたんやと、私は思うております。

*********

心中天網島は、近松が編んだ、浄瑠璃という名の網を
何度も解いては結び、解いては結びながら、
読んで、聴いて、見る事で、
観客もいつしか網の中に編み込まれていく、
そんな作品やないかなと思います。

一度では足らないので、またぜひ文楽でかけて下さいませ。
よろしくおねがいします(*´ω`*)



8月2日は国立文楽劇場へ
夏休み文楽特別公演第2部に伺いました。

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仮名手本忠臣蔵の三分割通し公演の第二回目です。

五段目  山崎街道出合いの段/二つ玉の段
六段目  身売りの段/早野勘平腹切の段
七段目  祇園一力茶屋の段 

チケットは初日前にまさかの全席ソールドアウト。
本当に大勢の方がお運び下さっていて、とても嬉しかったです(*´ω`*)

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お席1列14番にて

個人的な感想ですが、あくまでもウチ的には
この公演は5段目から6段目が聴き応え、見応えがありました。

勘平とおかるを翻弄するのは理不尽か
それとも、先に仕出かした事の因果か

所詮は抗えん運命のやるせなさを感じながら
どっぷり文楽の世界にはまり込ませて頂きました。

身売りの段

咲様、燕三さん よかったです。

 「アイ」「ヤ」「アイ」「ヤ、ヤ、ヤ」「アイナア」

 「なんの因果で人並な娘を持ち、この悲しい目を見る事ぢや」と
 歯を食いしばり泣きければ、娘は駕籠にしがみつき、
 泣くを知らさじ聞かさじと、声をも立てず咽せ返る。

段切りは胸に迫るものがありました。

勘平切腹

呂勢さん、清治さん、とてもよかった。
清治さんってあんなふうに掛け声をかけはるんや。
普段あまりそういう事をなさらない方やと思うていたので
びっくりしておりました。

和生さん勘平、絶品でした。
黙って俯いている姿がとても美しく
切腹の最後、こと切れる瞬間は素晴らしかった。

一輔おかる、切なかったです。
惚れた男のために身を売る複雑な感情がようわかった。

亀次与市兵衛、簑二郎女房もヨカッタです。

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祇園一力茶屋の段

床も手摺も豪華な演出。
由良之助、おかる、平右衛門、九太夫。
聴き応え、見応えがありました。

一番の眼福は、何というても簑助おかる。

2階の障子を開けて柱にもたれかかり
風にあたるおかるの姿は、得も言われぬ風情、美しさで
ほうとため息をついたことでした。
一輔さんもよかったです。

玉翔力弥は春から引き続きイケメンキープでGJ。
咲寿君もしっかり語っていた。
力弥は好きなキャラクターなので
ぜひぜひ今以上にイケメン度高めて欲しいところです。

次はいよいよ秋ですね。
楽しみです。

よい文楽になりますように(^人^)


7月30日は国立文楽劇場へ
夏休み文楽特別公演第3部に伺いました。

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国言詢音頭(くにことばくどきおんど)は
元文2年(1737年)7月2日 曽根崎新地の茶屋で
薩摩藩士が遊女を含む5人を斬り殺したという
実際の事件を題材として書かれたサスペンス・スプラッターです。

原作は上中下の三巻、ですが、正本は刊行されず
現存するのは「下の巻 五人伐(ごにんぎり)」抜本のみ。

初演は天明8年、その後改作を経て、大川の段、大重(五人伐)のみの
2段上演が定着しました。
(※以上、2019/8/4 鬼鳥庵 久堀裕朗先生のお話から)

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大阪市立図書館デジタルアーカイブ
『竹本彌太夫遺文庫827 國言詢音頭 下の巻 五人伐の段』(床本)

物語自体は非常にシンプルなのですが、
演出のえげつなさ、気色悪さ、恐ろしさ、
そこに重なる悪の魅力を存分に味わえる作品です。

今年は久々に本水も使用。
なぶり殺し、はねた首の唇ねぶり回し
血まみれの解体ショーを見せつけられ
背筋を凍らせた挙げ句に本水でさらに冷やされるという、
猛暑の夜にピッタリの最高の仕上がりでした。

すでに日が経ってしまいましたが
感想を下記に少しだけ。
お席1列14番(井戸の前)にて
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国言詢音頭 
大川の段


浄瑠璃の中に心情描写はほとんど出てこない初右衛門の
心の内を微妙な人形の顔の傾きや目の動きで感じさせる。
人形遣いの醍醐味を、初右衛門登場からじっくり味わえます。
玉男さんの遣う人形はやっぱり色っぽい。

清十郎菊野、勘彌仁三郎 とても良い感じでした。
そして玉志伊平太の誠実。

町衆が都市を治めていた江戸期の大阪では
薩摩の名君、島津家に仕える侍であろうとも
どこか田舎者と馬鹿にされていた様子もよくわかります。

豆腐の御用のパロディなどもあり
ちゃらけた楽しさもある段ですが
段切りに全てが闇へと反転する。

  ハヽヽヽ初右衛門を灯蛾だと思ふか。

  ・・・・・・

  胸の空鞘打割りし、心の寝刃研ぎすまし、川辺伝ひに

睦さん、清志朗さん、ヨカッタです。

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五人伐の段(大重)

この段、本当に聴き応え、見応えがありました。
何というても玉男初右衛門のえげつなさ、色っぽさ。

皆の前で一旦は許すそぶりを見せ安心させた後で
恨みつらみ一切合切をその刀にまとわし全てを斬り殺す。

 蛍火に思ひ焦がれて身を焦がす、今日のうつゝは明日の夢

 ・・・

 桐の葉落とす秋の風。
 更ける夜すごく降る雨の、小止みもやらぬ瞋恚の邪念、
 また立戻る初右衛門

 ・・・

 我より先へ飛ぶ虫に灯火消えて真の闇
 
自分は夜の灯に近づき自らを焼いてしまう
蛾のような愚か者ではないとタンカを切った初右衛門が
灯りならぬ邪念の炎に自らを燃やし闇へと入り込んで行く。

真の闇に浮かび上がる邪念の炎。
降る雨に消える事もなく燃え上がる。
この対比のなんと美しい。

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菊野の首を腕で締め身体のいたるところを刀で突き切り
最後は腹にぐっと深く刺し込み、屍となったその首を切り落とし

 髻掴んで掻切る首、
 血に染む丹花の唇をねぶり回して念晴らし

おそらくは、どれほど金を遣っても
菊野は八右衛門に唇は許さんかったのやないでしょうか。

田舎侍は、それでも、遊女の嘘にのぼせ上げ
とうとう御用金にまで手を付けてしもうた。

そこまでして恋い焦がれたその唇から
まるで大川の水が溢れ出るかのように
自分を嫌う言葉が途切れる事なく流れ出た。

憂さ晴らしどころやない。
どれほどねぶり回しても全く足らん、
その唇を切り取って食べてしまいたいくらいには
思うていたのやないでしょうか。

このシーン、ほんまにヨカッタです。
床も手摺も、めちゃめちゃえげつなかった(褒め言葉です)

この後の連続殺人もそれはそれはえげつないんですが
やはり菊野惨殺がコアやね。
この勢いで後は全部殺しまくる。
仲居の解体ショーなど、凄まじかったです。

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ラストシーン、井戸で足を洗う場面は
ドキドキするほど美しかったです。

人形の足がこれほど色っぽいとは知らんかった。

なんでこんなに色気を感じたのか全くわかりませんが
ここだけでも繰り返し何回も見たいと思うほど。

やがて足を洗い刀にサラシを巻きつけた八右衛門は
下駄を履き、蛇の目をさして、どこか風流に、どこか美しく
大きく笑って去って行く。

  山寺の春の夕暮来て見れば
  ハヽヽヽヽヽヽ、アリヤ寒山寺諸行無常の鐘の声、南無阿弥陀仏

  弥陀仏の西の国へと急ぎ行く、
  不敵なりける次第なり。


****************

初右衛門というキャラクターがあまりにも魅力的やったので
感想の中心が彼になってしまいましたが、
清十郎菊野、おすみ紋臣の絡みなど、
とても良い雰囲気で楽しませていただきましたし
仁三郎とおすみの絡みもええ味を出していはりました。

織さん、藤蔵さん、
千歳さん、富助さん、清允さん
皆さん、ヨカッタです。

特に大重。

素晴らしかった。
有難うございました。



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