出典:「文楽の研究」(三宅周太郎著)中の巻
文楽人形物語並びに終戦後の文楽その2-1、人形遣ひさまざま

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昭和3年6月21日、三宅周太郎先生が松竹の衣装部納戸(南区御堂筋周防町)へ
衣装わりの見学に行った時に見た人形遣いさん達の様子です。

【下記要約】

人形遣いが集まっている所に頭取の玉次郎さんが来ました。
手には東京興行の割当を書いた紙を持っています。
それを20人ほどの人形遣い一人ひとりに渡すと
一瞬場内がシンと静まりました。
全員が固唾を飲み、その紙を見つめ、役について考えていたからです。

それは真剣な静寂でしたが、やがて紙を見ながら皆が喋り始めます。

「これだけでは情けない(´・ω・`)」

そう言っているのが50歳の桐竹門造さん。
弁天座の忠臣蔵で師直を遣った淡路出身の人形遣いさんには
少々役不足だったようです。

「こないぎょうさん役をもろてからに(〃∇〃)」

そう言っているのは玉次郎さん。
頭取でも役の割当は座の外の主任がしはるので
ここへ来て紙を見るまで知らんかったみたいです。
頭をかいて(役が多すぎて大変やわあと)へこたれているフリをしても
包み隠すことのできない嬉しい気持ちがバレバレ状態。

「今度はわてが玉手御前だっせ(*´∀`*)」

頬を赤らめて筆者に云ふのが文五郎さん。
4月は栄三さんが遣うてはったその役が自分になったのがちょっと得意で嬉しそう。
文五郎さんこの時60歳。栄三さんと並ぶ人形遣いの大将がこの無邪気さとは(ノ∀`)

【要約ここまで】

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文五郎さんは亡き文雀師匠、簑助さん、人間国宝2人のお師匠様です。
当時のご様子はお写真で拝見するしかできませんが
うっとりするような遣い手さんやったことは容易に推察できます。
そんな方がこんなんやからなあ(ノ∀`)アチャー。

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人形の髪を整える文五郎さん
(出典:写真集なにわ今昔/毎日新聞社)

人形に対する愛情がひしひしと伝わって来るエエお写真です。
このお顔で割当の紙を見て頬を赤らめていやはったんですね。
なんかかわゆす(*´ω`*)


文楽の研究 (岩波文庫)
三宅 周太郎
岩波書店
2005-08-19