7月30日は国立文楽劇場へ
夏休み文楽特別公演第3部に伺いました。

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国言詢音頭(くにことばくどきおんど)は
元文2年(1737年)7月2日 曽根崎新地の茶屋で
薩摩藩士が遊女を含む5人を斬り殺したという
実際の事件を題材として書かれたサスペンス・スプラッターです。

原作は上中下の三巻、ですが、正本は刊行されず
現存するのは「下の巻 五人伐(ごにんぎり)」抜本のみ。

初演は天明8年、その後改作を経て、大川の段、大重(五人伐)のみの
2段上演が定着しました。
(※以上、2019/8/4 鬼鳥庵 久堀裕朗先生のお話から)

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大阪市立図書館デジタルアーカイブ
『竹本彌太夫遺文庫827 國言詢音頭 下の巻 五人伐の段』(床本)

物語自体は非常にシンプルなのですが、
演出のえげつなさ、気色悪さ、恐ろしさ、
そこに重なる悪の魅力を存分に味わえる作品です。

今年は久々に本水も使用。
なぶり殺し、はねた首の唇ねぶり回し
血まみれの解体ショーを見せつけられ
背筋を凍らせた挙げ句に本水でさらに冷やされるという、
猛暑の夜にピッタリの最高の仕上がりでした。

すでに日が経ってしまいましたが
感想を下記に少しだけ。
お席1列14番(井戸の前)にて
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国言詢音頭 
大川の段


浄瑠璃の中に心情描写はほとんど出てこない初右衛門の
心の内を微妙な人形の顔の傾きや目の動きで感じさせる。
人形遣いの醍醐味を、初右衛門登場からじっくり味わえます。
玉男さんの遣う人形はやっぱり色っぽい。

清十郎菊野、勘彌仁三郎 とても良い感じでした。
そして玉志伊平太の誠実。

町衆が都市を治めていた江戸期の大阪では
薩摩の名君、島津家に仕える侍であろうとも
どこか田舎者と馬鹿にされていた様子もよくわかります。

豆腐の御用のパロディなどもあり
ちゃらけた楽しさもある段ですが
段切りに全てが闇へと反転する。

  ハヽヽヽ初右衛門を灯蛾だと思ふか。

  ・・・・・・

  胸の空鞘打割りし、心の寝刃研ぎすまし、川辺伝ひに

睦さん、清志朗さん、ヨカッタです。

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五人伐の段(大重)

この段、本当に聴き応え、見応えがありました。
何というても玉男初右衛門のえげつなさ、色っぽさ。

皆の前で一旦は許すそぶりを見せ安心させた後で
恨みつらみ一切合切をその刀にまとわし全てを斬り殺す。

 蛍火に思ひ焦がれて身を焦がす、今日のうつゝは明日の夢

 ・・・

 桐の葉落とす秋の風。
 更ける夜すごく降る雨の、小止みもやらぬ瞋恚の邪念、
 また立戻る初右衛門

 ・・・

 我より先へ飛ぶ虫に灯火消えて真の闇
 
自分は夜の灯に近づき自らを焼いてしまう
蛾のような愚か者ではないとタンカを切った初右衛門が
灯りならぬ邪念の炎に自らを燃やし闇へと入り込んで行く。

真の闇に浮かび上がる邪念の炎。
降る雨に消える事もなく燃え上がる。
この対比のなんと美しい。

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菊野の首を腕で締め身体のいたるところを刀で突き切り
最後は腹にぐっと深く刺し込み、屍となったその首を切り落とし

 髻掴んで掻切る首、
 血に染む丹花の唇をねぶり回して念晴らし

おそらくは、どれほど金を遣っても
菊野は八右衛門に唇は許さんかったのやないでしょうか。

田舎侍は、それでも、遊女の嘘にのぼせ上げ
とうとう御用金にまで手を付けてしもうた。

そこまでして恋い焦がれたその唇から
まるで大川の水が溢れ出るかのように
自分を嫌う言葉が途切れる事なく流れ出た。

憂さ晴らしどころやない。
どれほどねぶり回しても全く足らん、
その唇を切り取って食べてしまいたいくらいには
思うていたのやないでしょうか。

このシーン、ほんまにヨカッタです。
床も手摺も、めちゃめちゃえげつなかった(褒め言葉です)

この後の連続殺人もそれはそれはえげつないんですが
やはり菊野惨殺がコアやね。
この勢いで後は全部殺しまくる。
仲居の解体ショーなど、凄まじかったです。

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ラストシーン、井戸で足を洗う場面は
ドキドキするほど美しかったです。

人形の足がこれほど色っぽいとは知らんかった。

なんでこんなに色気を感じたのか全くわかりませんが
ここだけでも繰り返し何回も見たいと思うほど。

やがて足を洗い刀にサラシを巻きつけた八右衛門は
下駄を履き、蛇の目をさして、どこか風流に、どこか美しく
大きく笑って去って行く。

  山寺の春の夕暮来て見れば
  ハヽヽヽヽヽヽ、アリヤ寒山寺諸行無常の鐘の声、南無阿弥陀仏

  弥陀仏の西の国へと急ぎ行く、
  不敵なりける次第なり。


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初右衛門というキャラクターがあまりにも魅力的やったので
感想の中心が彼になってしまいましたが、
清十郎菊野、おすみ紋臣の絡みなど、
とても良い雰囲気で楽しませていただきましたし
仁三郎とおすみの絡みもええ味を出していはりました。

織さん、藤蔵さん、
千歳さん、富助さん、清允さん
皆さん、ヨカッタです。

特に大重。

素晴らしかった。
有難うございました。