7月27日はリーガロイヤルホテル大阪へ
エコールドロイヤル特別公開講座
第4回女流義太夫竹本駒之助の至芸
「妹背山女庭訓 金殿の段」を聴きに伺いました。

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妹背山女庭訓は大化の改新を舞台にした、政変、策略、
政敵同士のロミオとジュリエットのような恋、
権力奪回を目論むイケメンを挟んだ
乙女のラブアフェアなどが入り組んだ
全5段の壮大な物語です。

金殿の段は四段目、物語後半のクライマックス。
相関図を始めとした資料はこちらの拙エントリーにまとめています。

ダイナミックな一段で、私も大好きなんですが、
今回はそれを駒之助師匠、津賀花さんで聴ける、
そして解説は産経新聞の亀岡典子さんということで
台風の中コケんように、トレッキングシューズで足元固めて
伺いました。

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津賀花さんのお三味線が草をかき分ける橘姫の姿を描き出し
駒之助師の語りが始まります。

師匠は先日の酒屋よりずっと声が良く出ていらして、
特に低音の響きは素晴らしかったです。

求馬は若い娘たちが、何としてでも一緒になりたいと願うような
気品のある、クールなイケメンっぷり。

金殿では、ほんのわずかなシーンしか登場せんのに
凄い存在感を感じさせる。

求馬の要求に戸惑いながらも、受け入れてしまう橘姫。

   オヽ運命拙く事顕はれ、その場で空しくなるとても
   尽未来際変わらぬ夫婦

   エヽ忝ない、嬉しや

   と抱きしめたる鴛鴦の、番ひし詞縁の綱、引き別れてぞ忍ばるる。

橘姫を抱きしめながら冷めた目で遠くを見るような
そんな求馬が目に浮かびました。

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お三輪登場のお三味線は苧環の回る音でしたでしょうか。
これでお三輪が糸をたぐって来たとすぐにわかりました。

豆腐の御用でまたまたお三味線の調子が代わり
おてもやんの登場は下駄の音が聞こえるようで。

師匠が凄いのはもちろんですが
津賀花さんのお三味線も自在に登場人物を描き出して
何というか、このお二人が凄い(*゚∀゚)=3

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女官がお三輪をいびり倒すシーンは
まるで目の前で折檻されているようで
パシパシ!と叩かれる音に、こちらまで身体を避けそうになる。

これだけえげつないお仕置きをされた挙げ句
自分は求馬に捨てられた事を知るお三輪。

  袖も袂も喰い裂き/\、乱れ心の乱れ髪。
  口に喰ひしめ身を震はせ

  エヽ妬ましや、腹立ちや、
  おのれおめ/\寝ささうか

これが疑着の相やったのでしょうか。
目を充血させた鬼の形相のお三輪が目に浮かびました。
なんか、凄いものを見た気がする((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

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鱶七は偉丈夫などっしりした男っぷりでした。
何故、駒之助師匠のあの小さな身体から
こんなごっつい鱶七が現れるのか不思議でなりません。

鱶七がお三輪の腹に刀を突き刺しながら語る
蘇我入鹿出生の秘密は、どこか絵空事のような
壮大なファンタジーなのですが

それは現実なんや、入鹿を倒すため、
求馬(淡海)に手柄を立てさせるには
いじめ抜かれ、男に捨てられ、
鬼の形相になったお三輪の血は必要なんや、
つまり、ここまでのえげつない物語は
全部必然やったんやと納得させられる。

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全てを知ったお三輪の、なんとも言えん幸せそうな顔。

  枕かはした身の果報、
  あなたのお為になる事なら、
  死んでも嬉しい、忝い。

私は今までずっと、いや、そんなんあかん、お三輪ちゃん
ここで殺されて喜んだらアカンやろと思うていましたが
今回初めて、お三輪は幸せに死んで行ったんやな
色々大変やったけど、良かったな、そう思えました。

 たとへこの世は縁薄くと、未来は添ふて給はれ

 と這ひ廻る手に苧環の

 この主様には逢はれぬか、
 どうぞ尋ねて求馬様もう目が見えぬ、
 なつかしい、恋しや/\

糸の切れた苧環を、最後の最後に、手にとって
未来には一緒になれると願うお三輪。
でも最後にひと目、求馬に会いたかったやろなあ
可愛そうやった(´;ω;`)

ラストシーンは荒らしこ相手に鱶七の大立ち回り。
語りもお三味線も、段切まで凄まじい迫力で一気に駆け抜ける。

至芸にございました。
有難うございました。

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解説は産経新聞の亀岡典子さん。

戸板康二先生のコメントや、三輪の伝説などを交えて
妹背山女庭訓が如何に壮大な物語であるかを紹介して下さると共に
女性ならではの視点で解説も頂きました。
長年の取材で培われた駒之助師匠情報も。

前日に駒之助師匠とお打ち合わせしていた時に
「浄瑠璃のお話するの凄く楽しいね(*´ω`*)」と
師匠がおっしゃったそうで、
その時の師匠のお顔がなんとなく目に浮かび、
こちらまでほっこりさせられた事でした。

駒之助師匠は越路太夫のお弟子さんですが、
妹背山女庭訓だけは、彦六系の鶴澤寛治師匠にお稽古して頂いたそうです。

文楽(浄瑠璃)の演奏には、文楽系、彦六系、2つの流派があるそうですが
今はほとんどが文楽系になっているとか。

駒之助師匠の妹背山女庭訓は彦六系なので、
ぜひ文楽系との違いも感じて下さいとのことでした。


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今回は亀岡さんの解説から素浄瑠璃の段切まで
1時間半ほどの時間でしたが、
あっという間の、けれど、お腹いっぱいの
重厚な時間を過ごさせて頂きました。

素浄瑠璃は「聴く」というのが正しい日本語なのでしょうが
駒之助師匠、津賀花さんのそれは「聴く・見える」ものです。
とにかく見える。見たことのないものが見える。
形あるものでは表現できない何かが見える。
そんなふうに思います。
本当に素晴らしい(*´ω`*)

駒之助師匠、津賀花さん、亀岡さん、
この度は有難うございました。

来年も楽しみにしています。