6月29日は西宮の白鷹禄水苑さんへ
竹本駒之助師匠・鶴澤津賀花さんの素浄瑠璃
「艶姿女舞衣・酒屋の段」を聴きに伺いました。

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「艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)」は、
元禄時代に実際に起きた心中事件を題材に
竹本三郎兵衛と豊竹応律が描き上げた全三段の世話物です。
初演は安永元年(1773年)大坂豊竹座。
「酒屋」は下の巻にあたり、今ではこの段のみが上演されています。

床本はこちらから
(ようこそ文楽へ 鶴澤八介メモリアル 「文楽」ホームページ)


最初から段切まで、聴きどころ・泣き所の連続のような浄瑠璃で、
私も大好きなんですが、これを駒之助師・津賀花さんで聴けるやなんて
もう嬉しくて、嬉しくて。
この日は新しい白足袋を履いて出かけました(*´ω`*)

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艶姿女舞衣・酒屋の段

静まり返った会場を、津賀花さんのお三味線が
寂しく、いじましい黄昏の色に染め
やがて駒之助師匠が静かに語り始めます。

 ーこそは人相の鐘に散り行く花よりも、
  あたら盛りをひとり寝の、お園を連れて、父親が、
  世間構はぬ十徳に、丸いあたまの光りさへ、
  子ゆゑに暗む黄昏時。

この瞬間、情景がふわあっと目の前に広がり
そこから先は、お2人の描き出す浄瑠璃の底なし沼に
ウットリと、はまり込んで行きました。

駒之助師匠は芸が枯れ、静かに語りを堪能させていただける、
それだけで至福です。
津賀花さんは、床本の文字には書かれていない世界を
お三味線の音色で描き出す。

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家族1人1人の心模様、
皆が揃って、ぼろぼろと溢れさせる涙の音。

 ーかういふ時宜になった時は、
  褒めらるヽより笑はれるが親の慈悲。

ここで一気に涙腺決壊。

宗岸に泣き、半兵衛に泣き、姑に泣いたところで

 ー今頃は半七さん

お園のいじましさに決壊した涙腺がついに崩壊

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したところで、お三味線の音色は一気に変わり
それが、今までそこにはいなかった、
可愛らしいものの登場やと、すぐに理解出来ました。

乳を求めハイハイしてくるお通の足の音、泣き声を
ウチは初めてお三味線で聞いた気がします。

お通の守り袋から落ちた手紙を読むお園。
おれに読ませと手紙を取ろうとする宗岸。
父と娘の手紙の引っ張り合い。
書かれた言葉に涙する4人。
お通を抱き上げる半兵衛夫婦。
家内の様子を伺う半七と三勝。

 ー 乳はここにあるものを、
   飲ましてやりたい、顔見たい、乳が張るわいの

そして物語は怒涛のクライマックスへ。

お通を抱き、未来へ、生きる希望に溢れる家族。
死へと向かう半七・三勝。

生と死の対比、絶望と希望が折り重なった段切の
その凄まじさに涙が溢れた。

 ー 大和五条の茜染め、いま色上げし艶容。
   その三勝が言の葉をこヽに、写して止めけれ。


至芸にございました。
有難うございました。

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7月には、駒之助師匠・津賀花さんで
妹背山女庭訓の五段目、金殿の段がかかります。
凄く好きな段で、とても嬉しい。

師匠、津賀花さん、これから暑くなりますが、
どうぞお身体ご自愛あそばして
良い浄瑠璃を聴かせて下さいませ。

楽しみにしています(*´ω`*)

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【おまけ】
素浄瑠璃という底なし沼に沈む楽しみ・至福の時間


素浄瑠璃はイメージの底なし沼です。
人形浄瑠璃なら、人形の動きで、ある程度イメージは完成されます。
ですが、素浄瑠璃は、良ければ良いほど、深ければ深いほど、
イメージは果てなく広がり、まるで底なし沼にはまり込んだように、
どっぷりと、ウットリと、溺れていく心地よさに
そこから抜け出す事が出来なくなる。

素浄瑠璃を聴き終わってから、かなりの時間が経っても
底なし沼はどんどん深くなって行きます。

床本を読んでは、素浄瑠璃を思い出して泣き、
語ってみては、登場人物の心情を真に受けて泣き、
ちょっと動いてみては腰をゆわし、

気がつけば、登場人物の顔や動きどころか、舞台装置まで
自分の中でこさえてしもたりして。

深くて美しい浄瑠璃の沼に溺れ
心を解き放ち無限のイメージの中に遊ぶ。
それは私にとっての、至福の時間です(*´ω`*)