昨日6月22日は国立文楽劇場へ、
本年度の文楽若手会に伺いました。

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この会は、お若い技芸員の皆様が、日頃のご精進の成果を披露する
文楽ファンにとってはとても楽しみな、ある種の「発表会」的なものです。

チケットも破格のリーズナブルプライスで、
気軽に行ける、はずなのですが、
今までは予定があわず、今回初めて伺わせて頂きました。

感想としては「行って良かった」この一言に尽きます。

若手の皆さんが、普段は付くことのない大役と向き合い全力で演じる。
この熱量は半端なく、それを受け止める観客もエネルギーを使います。
終演後は心と身体に心地好い疲労感、爽快感が残り
得も言われぬ幸せな気分で劇場を後にしたことでした。

そんなことですから、個別の感想を書くのは無粋かとも思えますが
自分のメモとして以下に記そうと思います。

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義経千本桜 三段目 

床(浄瑠璃)

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出典:文化デジタルライブラリー

椎ノ木の段

碩君・清允君、丁寧な浄瑠璃でした。
碩君は本当に声がいい。
そして何よりこの方は骨格が整ってる。
だから安定しているのです。
この方の将来が本当に楽しみです。

咲寿君、友之助君、なかなか難しい感じでしょうか。

咲寿君は長いスランプに陥っているようにお見受けします。
昨年4月、須磨浦の段での「母さまいのう」に私は感動しました。
7月の六波羅館の段はお浄瑠璃をひとつに繋げられていた。
この2段は、咲寿君のこれからに期待出来るものでした。

ですが11月の葛の葉子別れで少し調子を崩されましたでしょうか。
恐らくは、4月、7月を受けての大抜擢やったと思いますが、
その出来は少し難しいものでした。
それ以来、回復の兆しが見えません。
恐らくは、御本人が一番苦悩なさっていると思います。

まだまだお若いのですから、上手になさる必要はないのです。
焦って遠くの点まで一気に線を結ぶ必要もない。
体力をつけ、身体と歩き方を整えながら
点を打つように、一歩一歩進んで行かれれば
時間はかかっても、必ず前に進めましょうし、道も残せます。
道が残っていれば、迷った時に迷う手前の場所まで戻れます。

今は色々な重しを背負い抱えて、ずいぶん苦しい事かと思いますが、
身体を鍛えて、その重しを力として取り込めるようになれば
自分を苦しめた重しが、やがては芸を支える重い錨となりましょう。

頑張って下さい。

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出典:文化デジタルライブラリー

小金吾討死

小住ン、錦吾君、強かった。
コスミンはこのところ、どんどん太く強くなっている気がします。
錦吾君も強いお三味線でした。

すしや(三段目の切)


前・中・後と浄瑠璃がひとつに繋がって、とても聴き応えがありました。
普段じっくり聴けないお若い太夫さん、お三味線さんの浄瑠璃を、
たっぷり、良い気持ちで堪能させて頂きました。

芳穂さん、美声を生かして大きく語られました。
清馗さんのお三味線もよかった。

靖さんは普段より伸び伸びと語っていらした気がします。
「思い切り」といったほうがエエのかな。
それがいつも以上の語りに繋がったように感じられました。
寛太郎君はウンウン唸って、凄くファンキーで驚いた(褒め言葉です)。
この2人の浄瑠璃は凄かったです。
本公演でも十分いけそうな、そんな感じでした。
靖さんは、そろそろ若手会卒業が近いのかしら。
そんな事も思わされたことでした。

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出典:文化デジタルライブラリー

亘さん・清公さん、前・中、2組のバトンをしっかり受け継ぎ
段切まで力強く語ってくれました。

このパートは、前・中の語りを受けて最後に客を泣かせる
責任重大な場面です。前・中が良ければ良いほど
プレッシャーは重くのしかかる。

けれど、しっかり受け止め、語りきられました。
亘さんの語りは賑やかしいものやったけど
今回のこれは、強いものになっていました。
清公君も、よう弾き切った。

 ー死んだを見ては一足も歩かるゝものかいの。
  息ある内は叶はぬまでも、助かる事もあらふかと、
  思ふがせめての力草、留めるそなたが胴慾ー

涙腺崩壊。お見事でした。

手摺(人形)

玉勢さん、いがみの権太、とても大きく遣われていました。
難しい役どころですが、ロクデナシから心を入れ替える場面まで
しっかり遣えていた。
左はどなたがお遣いでしたか。美しかったです。

玉翔君、小金吾とても美しかったです。
悲しい最期にも関わらず、ウットリしておりました。
忠臣蔵の力弥、今回の小金吾と、イケメンが続きますが
玉翔君にはそういう人形がよく似合う。
夏の忠臣蔵も楽しみです。

文哉さん、弥左衛門、よかったです。
人形の後ろ姿はその役の性根が出る。
権太にすがる最後は、浄瑠璃に遣いが重なった。
泣きました。

簑紫郎君お里、とても可愛かったです。
イケメンと夫婦になれると喜ぶ積極的な村娘から
事実を知って立場をわきまえた後の表情まで
あまり動きのない場面でも、
その顔にお里の気持ちが見えて
ほうとしたことでした。

勘介君、景時、重たかったと思います。
よう気張らはりました。顔中に玉のような汗かいてはった。
勘介君は、虎とか馬とか、かぶりものが多くて
人形遣いやのに、身体はってよう気張るなあと
思うて見ていたのですが
今回は偉丈夫なお侍を汗だくで遣うていて
まるで授業参観で我が子を見守るように
大丈夫かとハラハラしながらも
こんな大役を遣うやなんてと、
嬉しく思うておりました。

他の人形遣いの皆さんも、よく遣っていらしたと思います。
本公演ではなかなか主遣いとしてお顔の見られない皆さんの
真剣なお顔が見られて嬉しかったです。


妹背山女庭訓 四段目から 道行恋苧環

この段、この楽曲は、やはり難しいのでしょうね。
本公演で「きれいやなあ」と、ただウットリ見聞きしているそれは
当たり前ではないのやと思い知らされたことでした。

ですが、お三味線は美しかったし
紋臣さんのお三輪ちゃんも可愛かったです。
ラストシーン、お三輪ちゃんバッチリ決まっていました。

有難うございました。

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文楽若手会は初日と千穐楽の2日間しかありません。
これを書いている今がまさに千穐楽のクライマックスでしょうか。
良い文楽であろうと思います。

最後まで、ご安全に、公演の成功を祈るとともに、
この会が、技芸員の皆様にとって良いご精進の機会となりますことを
願っています(^人^)