8月19日はリーガロイヤルホテル大阪へ
エコールドロイヤル特別公開講座
第3回女流義太夫竹本駒之助の至芸
「冥途の飛脚 封印切の段」を聴きに伺いました

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冥途の飛脚は宝永7年(1710年)実際に起きた
飛脚屋の横領事件を題材に近松門左衛門が描き上げた全三段の世話物です。
初演は正徳元年(1711年)竹本座。

ざっくりした情報は日本芸術文化振興会の
文化デジタルライブラリーでご覧頂けます。

◆文化デジタルライブラリー「冥途の飛脚」


あらすじは

「飛脚屋の養子忠兵衛が新町の格子女郎梅川に入れあげ相思相愛になり
身請け話しを破談にするため客の金300両を横領して遊郭で撒き散らし
梅川と2人故郷の新口村へと逃げ忠兵衛のオトンと会うも結局捕まり(rya」

みたいな感じで、文楽の様式美「ええええそやったん?」もなければ
息を呑むほど美しい殺しや心中シーンもありません。

けれど描写される情景や登場人物の心模様のコントラストが激しく
封印切など一段聞けばどっぷり浄瑠璃の沼にはまり込んで一週間は出られない
それほど聴きごたえのある浄瑠璃です。

そんな段を駒之助師匠と津賀花さんで聞けるやなんて。
夏休みの終わりにこれほど楽しいことはないと
一張羅の絽を着付けて出かけました(*´ω`*)

以下、個人的な感想を。

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写真:文化デジタルライブラリー 青木信二さん

◆封印切の段

始まりは津賀花さん。
お三味線が賑やかな郭を描き出し会場全体を吉原に誘います。

ええなあ、大門くぐるてこんな感じかなあとウキウキしたところへ
気を落とした梅川が現れ

女郎や禿が拳をしてキャッキャと遊ぶ傍らで
惚れた男への純情を持ちつつも、金に左右されるしかない
自分の身の上を嘆きます

禿が謡う可愛らしい浄瑠璃と
やり切れん女郎の悲しい口説き

 -傾城に誠なしと世の人の申せども、
  それは皆僻言訳知らずの詞ぞや-

そこへやってくる八右衛門。
梅川は「ウチがいてるて内緒にして」と言い
女郎達は階段を降りていきます。

****
ここのお三味線は素晴らしかった。
女郎が階段を降りていく音がしっかり聴こえました。
ああ、みんな降りてる降りてる~いう感じ。
****

豪快な八右衛門は忠兵衛の遣い込みを話し鬢水入れを見せる

それを見ながらはあ、あ、あああと怖気づく女郎の顔

2階で畳に顔を擦り付けて声隠し泣く梅川

隠れて聞いていた忠兵衛は懐に入れていた
仕事の金300両に手を着けるか否かで自分自身と押し問答

*****
登場人物皆の心根仕草が全く違う場面を
師匠と津賀花さんが語り分ける
見事でした

*****

そしてクライマックス封印切

荒ぶる忠兵衛 
止める八右衛門 
飛び交う小判
涙にくれる梅川

  -情けなや忠兵衛様

  -わしを人手にやりともない それはこの身も同じこと

  -大阪の浜に立つてもこなさん一人は養ふて
   男に憂き目はかいえまいもの
   コレ 気を静めて下さんせ

座敷に散らばった嘘と罪で光る小判の上に
水晶のような真実の涙が落ちる

*****

この場面のなんと美しかったこと。
近松の作品はこれほど美しかったんかと
改めて感じさせられたことでした

*****

梅川の心を聞いた忠兵衛は荒ぶりから一転有頂天
養子に出る時オカンが持たせてくれた金やと嘘を重ねます

ようもまあそんな嘘が出てくるもんやと呆れるほどに
エッヘン!な感じでスラスラと

八右衛門は訝しながらも借用書と金を引き換え
郭の衆もこれで一件落着とぞろぞろ帰り
後に残った梅川は喜びと安心で一気にマターリ
盃してお祝いされて大門を出られるとおっとりしたのもつかの間

忠兵衛わっと泣き出し

 -いとしや何も知らずか この小判は堂島のお屋敷の急用金
  
 -そなたの心の無念さを晴らしたいと思ふより
  ふっと金に手をかけて もう引かれぬは男の役

 -地獄の上の一足飛び 飛んでたもや

忠兵衛は梅川にしがみつきます

それ見たことか、ならば命は惜しくない、2人で死のうという梅川に
生きられるだけは生きるんや!と、奮い立つ忠兵衛

死を覚悟の逃避行を心に決めた2人のもとに
金の出所を知らん女将と禿がめでたいめでたいと戻ります。

 -めでたいと申そふか お名残り惜しいと申そふか 
  千日云ふてもつきぬこと

 -エ、その千日が迷惑

梅川は忠兵衛の袖にすがり 忠兵衛は梅川を抱き寄せ
二人で七転八倒しながら郭の出口へ

 -ゆふつげ鳥に別れ行く 栄耀栄華も人の金
  果は砂場を打過ぎて 跡は野となれ大和路や 足に任せて出でて往く

*****

まるでジェットコースターのように
梅川と忠兵衛の心情、表情が変わる。
最後に覚悟を決めた二人が目の前で足を躓かせながら郭を去っていく
その足音、息遣いまで聴こえるようでした

梅川は格子女郎にも関わらず一途で
忠兵衛は色気の走る短期な阿呆で
八右衛門は男気溢れる豪快な商人で
禿は可愛く女郎はけだるい

賑やかしさ、憂い、呆気、友情、怒り、喜び、自慢、悲しみ
死への覚悟エトセトラ

登場人物はバラエティに溢れ、心模様は激しく移り変わり
情景と心情が大きくコントラストをつけて物語を盛り上げていく

これほど激しい段を見事に語りきる駒之助師匠、
そして撥を弾く津賀花さん

至芸でございました。

ウチは今まで近松門左衛門という人の作品を
随分誤解していた気がします。

この情景、心情のコントラスト、激しさ、美しさ
今まで聴こえてなかった、見えてなかったもんを
教えていただきました。

駒之助師匠、津賀花さん 有難うございました。
また来年もぜひ聴かせて下さいませ。
楽しみにしています。

女流義太夫の魅力
日本の音楽・楽器
日本伝統文化振興財団
2004-09-21